『ロング・エンゲージメント』

中島みゆきの実験劇場『夜会』で『vol.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』というのがあり、私が(LDでだが)観た中ではそれが一番好きだったりする。
それは"待ち人"を待つ者に対し、きびしい眼差しを向けた公演であった。
つまり、待ち人を"待たない"というテーマを語り、"待つ"事が美徳という思い込みに痛烈な一撃を与えていたのだ。

土曜日に年明けから楽しみにしていた『ロング・エンゲージメント』を初日の初回で観て来た。入場者が6人しかおらんかった(笑)
期待に違わぬ傑作。大変良かった。2時間ダレ場なし。



チョイ役でジョディ・フォスターが出ていた。なんで出演したのか分からんが(久しぶりに買ったパンフレットには彼女の写真が載ってない。やはり映画のチョイ役でというと自身のキャリアに問題がでてくるからか?)今まで観た中で一番上品な顔つきであったと思う。単に派手さを抑えただけかもしれないが、非常に良い顔つきで、この顔は好きだなと思った。
それから『アメリ』でもそうだったが美術デザインは相変わらず魅力的であり、ジュネの映画は過剰な程に美術に官能性があると思う。美術から得られる有形無形の情報が映画の厚みを支えている。

この映画は過酷な戦場から逃れる為に5人の兵士達が自分で自分の手を損傷させ、それが罪に問われ死刑を宣告される所から始まる。武器も持たせられずに敵陣の中間地点に置き去りにされるのである。
戦争映画と言うものは良くも悪くも男の子の攻撃性を刺激する。勇敢に突撃し、最後には生き残って英雄になるとか、華々しくも美しく戦場で死ぬ兵士を自分に投影して戦争ごっこをするものだ。
ほとんどの戦争映画がその為に機能していると言って良いかもしれない。
しかし、この『ロング・エンゲージメント』は、自分で自分の手を銃で撃ち抜いてまで逃れたいという所が戦場なのだという現実を映画の冒頭から突きつけてくる。
自分の手を自ら不具にしてしまうという所が平和ボケしている私からすればすでに狂気だ。
深く掘込まれた塹壕から頭をちょっと出しただけで撃たれるという場所で、華々しく勇敢に突撃などという事が如何に無謀で現実的でないという事を思い知らされる。
その置き去りにされた兵士達の中に主人公マチルドの婚約者マネクがいた。
死刑を宣告され戦場で行方不明になったマネクの死を受け入れず、自分の直感をたよりに捜索を始めるマチルド。
処刑された兵士達の関係者の証言をたどり、次第次第に核心に近づいていく。その中で、名も無いその兵士達の人生が浮き彫りになっていく。
戦場で兵士達は名もなき駒のようなものと勘違いされているが、その兵士一人一人にも掛け替えの無い人生があり、時に愛のある人間関係があることがわかってくる。
性格の悪い男であっても、シャバではヒモだった女に愛されていたりする。
そしてその女は自分の男を射殺した兵士達を殺害して死刑にされる。
戦場での理不尽な殺人は罪に問われず、真っ当な仇討ちが罪になる。
それが戦中と戦後を分つものなのであろう。
つくづく戦場には行きたくないものだと思う。
景気よく戦争を語る者は自分が前線に行く事はないと思ってるロクデナシに違いない。
今まで自分の中の戦争ごっことして投影できなかった映画の代表格が『フルメタル・ジャケット』だったが、この『ロング・エンゲージメント』もその中に入る。
真っ当な反戦映画だと言えるだろう。
あのラストシーンがハッピーエンドなのかどうか、私はまだ分からない。たしかにハッピーではあるのかもしれないが戦争の爪痕が深く刻まれている事を否が応にも意識せざるを得ないラストだったと認識する。

中島みゆきの『夜会』のテーマである"待たない"とは、女のもとへ約束どおり男が逢おうと急いで向かっているならば、「待つ」のではなく「逢う」地点までの距離を縮めるように歩みだせ、ということである。

『ロング・エンゲージメント』でのラストシーンに向かう為に、マチルドはマネクを生きてると信じて待ち続けるのではなく、自ら不具な脚を使って歩きだしたのだ。

多数の登場人物への理解と美術の見応え、そしてストーリーについても映画一度で深く理解できるほど利口ではないので、DVDでの再見が楽しみである。
by 16mm | 2005-03-14 00:38 | 映画・DVDの感想など。 | Comments(8)
Commented by ちゃた at 2005-03-14 01:13 x
ネタバレ!と思って本文未読、しかしコメンツするみたいな。
誉めてるようなので安心して観よう・・・つかなんか忘れてると思ったらコレだったよ・・・ちっ(笑)

ミーも基本的に自分のセンスしか信じねぇので人のオススメはスルーする性質デスが、デェスノォトはみないと損ですわ。

ロォレライ観終わったたから、やっと原作が読めるぅヽ(*`∀´)ノ
ィーヂスは先に原作読んじゃったからなぁ~映画こき下ろしそう(笑)

いやしかしシベ超を許容した今、何でもこいやー!ってカンジ。
NINNINはおもっきし糞だったけどね♪
Commented by 16mm at 2005-03-14 13:04
ミステリー仕立ての内容なので、御覧になるようでしたら読まないのが賢明かもしれません。
すごく面白かったけど、登場人物が結構多くて誰がダレだったか混乱したのでDVD発売時にじっくり反芻して観ようとおもっちょります(笑)
戦場の周辺にはロマンはあるかもしれんが、戦場にはそれが皆無であり徹底した残酷なリアリズムしか存在しないと言う事をまざまざと見せつけられた気分。愚劣な人間が更に愚劣になって存在するっちゅう意味で。

『デスノ』は色んな人からススメられるんですよね。食わず嫌いをせずに読んでみようか...
と思ったら今週休載していた(笑)
オイラの知っている『ジャンプ』はもうとうの昔になくなっているなとおセンチに思ったりして(笑)
『デスノ』は読みます(笑)
Commented by mlo_olmmlo_olm at 2005-03-15 09:11
ちーっす。
デスノは先週第一部完ってことで今週はお休み中。
再開は4月下旬になるので来週も載ってません。
と、デスノネタだけに反応してみる(^^
Commented by 16mm at 2005-03-15 13:12
URYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!
みんなデスノ好きなんだ。かなり孤立しちゃってる気分(笑)
考えてみれば『スラムダンク』すら読んでなかったもんな。
負けず嫌いを発揮して意地でも読みはじめるか。それとも老いを感じて諦めるか(笑)
10代の頃は漫画の読書量は負けない自信があったんだけど(笑)

ちなみに『ジョジョ...』もダメです、読んでません。
日本のサラリーマンに泥のような夢を見させる『常務 島耕作』程度の漫画なら気楽に読めるんだよね、つまんないの分かってるから(笑)
Commented by ちゃた at 2005-03-16 16:00 x
近所にTOHOシネマが明日オープン。
オープニングイベントにローレライ舞台挨拶(監督・役所・ブッキー・パメラw)

挨拶は11時の上演終了後。気付いた時にはチケット売り切れ・・・つか平日の午前なんて行けるワケがねーw

あーでもめちゃくちゃ生役所がみたい(´・∀・`)
Commented by 16mm at 2005-03-16 21:14
そうですか、パメラ(これで押し通すつもりであるw)来ますか(笑)
オイラとしては生デーブ監督を見たいと思ってますが(笑)
更に当日までのお楽しみゲストとして、トミノが来るなんてことはないのだろうか(笑)

おヒマでしたら(暇なんてないかもしれんが)、変わらずにちょくちょくコメントお願いしますね、チャタさんw
Commented by 16mm at 2005-03-17 09:17
週刊文春で、汚過ぎ氏がこの映画を女優の好き嫌いが理由で星二つの評価w オイラと好みが違うというのを改めて認識したしだい。よかったよかったw
Commented by ちゃた at 2005-03-17 13:40 x
汚杉はもはや老害でしかありませんなw


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