『ミリオンダラー・ベイビー』

ボクシングを題材にした小説やら漫画やらルポルタージュやら映画やらは沢山ある。沢山あるという事はそれを読み解く事に魅力があるからだ。
なぜ魅力があるかと言えば、それは"不自由"なものだからだと思う。
サッカーにしてもそうだろうが通常ならかなり難しいだろう脚技だけという不自由さで競技が成立しているからだ。極めて限定された条件下でその条件に特化した技を見られるのが魅力の一つだと思うのである。
ボクシングも同様で、ルール上拳しか使ってはいけない事になっている。
拳だけでどれだけ早く、深くダメージを与えられるか。
一発の鉄拳が打たれた方の人生を変えてしまう程のシビアなものなのである。
スポーツのルールというのは根本的な部分において、選手の命を守る装置みたいなものだと考える。ボクシングがスポーツの一つであるとするならば、その根本が機能してるとは思えない。
鍛えられた拳を凶器のようなグローブで固めて相手を打撃する。
いわば拳しか使ってはいけないというルールで行われる、リアルな命のやりとり。
『はじめの一歩』だったか、「ボクシングはスポーツなどではなく、ボクシングはボクシング以外のなにものでもない」という台詞があるが、まさに正鵠を射た言葉と言えるだろう。



劇場で『ミリオンダラー・ベイビー』を公開初日に観てきた。
非常に良い映画だった。
アカデミー賞にしても、これなら作品賞と監督賞を取っても文句はないだろう出来である。
アカデミー賞ついでに言えば助演男優と主演女優も『ミリオンダラー・ベイビー』が取っていたが、この辺りについても文句はない。
そして主演男優賞にイーストウッドもノミネートされいてたが、これも取って良かったのではないか。
今までの繰り返しの記述になるがジェイミー・フォックスよりも、ディカプリオや件のイーストウッドの方が主演男優賞に相応しいと思った。
『ミリオンダラー・ベイビー』の主演級の役者達は非常に良い演技とリアリティをだしている。
ヒラリー・スワンクのボクサー然とした筋肉。モーガン・フリーマンの抑えた、演技していないような演技。
イーストウッドもすごい老成したような演技をしつつも、印象としては非常に若々しく演じていた。
しかしイーストウッド、65歳。普通ならとっくに「老いたね」という作品を作ってしまう年齢であるのに、こんなハード過ぎる内容の映画を作るとは。畏怖するような存在であると言えよう。
映像としても私好みの表現(腹から下に照明が当り、上半身は影になっている)があったりして、非常に楽しめた。

内容については、語り始めるとシャレにならないネタバレになりそうなので書くのは止めておく。
自分一人の為の日記ではなく、少なくとも読んでくれる人もいる中で、この辺りは慎重にならなくてはならないだろう。

それでも感想を少々言わせてもらえば、孤独であるという事の考察というべきか。
人生でずっと頼っていた神でさえも現実に遭遇する孤独に関してはまったく無力であるという事だ。
ヒトの多くは孤独であるという事に無自覚に生きる。それはそれで幸福なことだ。
しかし、孤独を自覚した時、人はそれと戦う術を会得しようとあがく。
あがき、その術を身につけた時に、そのヒトは孤独から少しだけ解放される。
しかし、その術が使えなくなった時、そのヒトは孤独以上の絶望に苛まれる。
孤独と戦う為の能力が無くなった時、神はそのヒト救済してくれたか?
人生、ヒトは孤独であるという事が前提であり、だからこそ孤独を埋めてくれるモノやヒトがいかに貴重なものか、ということを私なりに作品から読み取った。
勝手に私が良いように解釈してるだけかもしれないので、作品の一般的な感想になるかは不明、と逃げておこう(笑)


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話は変わるが、これから上映される映画の予告編を観て大変たのしみになった。
『バットマン・ビギンズ』『亡国のイージス』なんかすごく楽しみだw
あと、一昨年ぐらいから楽しみにしている『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN』であるが、当初の予定より遅れに遅れてこのほどやっと発売日決定のアナウンスがあり、いつだ?と思って見てみたら「2005年 9月14日(水)予定
決定と書いてあるのに、この期に及んでまだ予定、とな(笑)


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TVシリーズの『攻殻機動隊』のDVDであるが全26話+1を全部売っぱらった。
全部で55700円。高いか安いか分からんが、良い作品だとは思いつつももう見返さないだろうとも思い、思い切ってしまった。
それを元手に『プラネテス』のDVDを買った。新品で買うつもりが、程度の良い中古を見つけられたので1巻2巻を購入。随時購入し全巻揃えるつもりである。
レンタルと違い、コメンタリーやら設定資料やらがついていて非常にお得ではある。
最初からまた観直しているが、やはり面白い。良い作品である。
原作のタナベを「一種、宮沢賢治的」と表現した監督に溜飲がさがった。
by 16mm | 2005-05-29 23:40 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Comments(9)
Commented by ayrton_7 at 2005-05-30 16:54
ポートレートの新作拝見させて頂きました。
16mmさんの腕が効いていると思うのですが、サイバーショットでも、
良い質感の作品に仕上がっていますね!
Commented by ちゃた at 2005-05-30 18:15 x
『ミリオン~』はいろんな映画評みると、自分向きじゃないような気がして迷うッス。

自分のまわりでもプラネテスすすめると、レンタルみてなおDVD購入しちゃう率がすごく高いデス。しかしS.A.C.売っちゃったかー・・・(笑)
Commented by 16mm at 2005-05-30 18:49
ayrton_7さんへ。
レンズ交換可能なデジカメでRAWデータを扱ってみたいものですが、まだまだ踏み切れません(笑)
サイバーショットについては、一部で悪名高いナイトショットを使って赤外線フィルム調の撮影ができるのが魅力です。
この機能は結構使えると思ってます(笑)
Commented by 16mm at 2005-05-30 18:53
ちゃたさんへ。
『ミリオン〜』は非常に身も蓋もない結末なので、良い映画だと思いつつも、なかなか人には勧められません。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』よりは後味は良いと思いますがw

『プラネテス』、やっぱいいわw
『攻殼』も良い作品ですけど、たぶん『プラネテス』の方が観返す回数が多いだろうと踏んで踏み切りましたw
セル版はオーディオコメンタリーがついてたりで、非常に中身が濃いですw
すげえ満足w
Commented by tomy at 2005-06-03 14:22 x
コメントありがとうございます。
僕もジェイミー・フォックス特にすごいとはおもわなかったですね。
「Ray」「コラテラル」どっちも劇場で見ましたが、へぇ~ って位に
しか(笑)特に「コラテラル」はダメでした。
あとイーストウッドは75歳ですよ。
74歳で史上最高齢オスカー監督賞受賞者だったと思います。
モーガンが70位?とんでもないおじいちゃん達です(笑)
ではではまた遊びに来て下さいね
Commented by 16mm at 2005-06-03 22:12
tomyさんへ。
書き込みありがとうございます。今後ともよろしくおねがいします。

モーガン・フリーマンを最初に観たのは『ドライビング・ミス・デイジー』ですが、これはポスターが印象に残ってるだけで本編は観ていません。
映画にでてるのを観たのは、その後『ロビンフッド』でした。ケビン・コスナーが主演してたやつです。
ほっぺになんか模様のなシミがあって、なんとなく覚えていたのですが、まさかこんなに名優になるとは思ってませんでした(笑)
モーガン・フリーマンで、『ミリオンダラー・ベイビー』以前なら『セブン』での演技がすごく好きです。映画の内容も私好みでした。
この役者、端役であってもジャンルを問わず出演して、その映画に一定の品質保証を付与しちゃう所がスゴイとこだと思います。
Commented by oh_darling66 at 2005-06-10 02:43

☆16mmさん、初めてご挨拶に伺いました、

先日来、御大の新作での行き来が叶い嬉しさひとしおです、

>…それでも感想を少々言わせてもらえば、孤独であるという事
>の考察というべきか。人生でずっと頼っていた神でさえも現実
>に遭遇する孤独に関してはまったく無力であるという事だ。

孤独は当たり前のように描かれ深く見つめられていると僕も感じ
ました、

それゆえ、フランキーとマギーの関係性はもとより、
スクラップとデンジャーの交感みたいな部分がはっとするほど
素朴に心に染み入りましたね...

ええ、私め、来週辺りから『宇宙戦争』でいよいよそわそわして
来そうなので、出来たら、叶うものならば(^^)、今週中にもう一度
映画館で向き合いたいです、
きちんと自分の内に納めておきたい映画なのです、

―16mmさん、
こちらのあちこちを少しづつ拝読したく思っております、
先ほど、exblog的(^^)リンクをさせて頂きました、
今後ともお付き合いのほどを頂ければ幸いです!
Commented by naomi-0604 at 2005-11-05 21:25 x
TB&コメントありがとうございました。
切ない物語でした。マギーは安らかに眠れましたよね。
Commented by 16mm at 2005-11-05 22:25
naomi-0604さん。
コメントありがとうございます。
大切な人に見送られたいという気もあるにはあるのですが、悔いなく生きてれば死を怖がるより、生きて必要とされてない自分に立ち会い続けなければならない事の方が辛いかもしれません。
そんな風に思いました。


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