『ジャンゴ 繋がれざる者』

Blu-ray & DVDセットを購入。
ネタバレあります。
劇場で観て以来の再見となるが、やはり面白い。
今のところオイラの今年の暫定ベスト3に入っているかな。
今回再見して分かったのは、画面が全体的に薄くマゼンタというか、パープルを基調としたトーンになっていたということに気が付いた。
それと以外と荒っぽいズームの使い方をするなということ。
観る側にカメラを意識させる演出というのは、これがフィクションであり、ファンタジーであり、そして映画であるということを意識させる。
大体の場合、映画の製作者は観る側にカメラの存在を意識させないように腐心するのだが、本作は逆。
本作はフィクションであり映画であるという前提を強調しているのだ。
監督であるクエンティン・タランティーノが前作の『イングロリアス・バスターズ』でつくりだしたと言える手法、歴史的事実を歪曲してでもエンターテイメント的な官能性や快感を優先するという映画のあり方。
鬱屈した史実よりもスカッとする歴史的鬱憤を晴らすための物語の構築をタランティーノは発明した。
黒人差別というテーマで黒人が白人や己を虐げてきな者たち全員に鉄槌を下すという、史実としてはありえなかった、また実際にあったとしたらすこぶる溜飲がさがる痛快な物語をタランティーノはフィクションとして映画の枠内で見事に成立させた。
そのタランティーノの物語の構築の仕方もさることながら、
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本作はなんといってもドクター・キング・シュルツを演じたクリストフ・ヴァルツに尽きるだろう。
ほぼ無名のオーストリアの俳優。
ドイツ語、英語、フランス語に堪能なところを本作でいかん無く発揮している。
作中におけるダイアローグが持ち味であるタランティーノにしてみれば願っても無い俳優なのだろう。
二作連続してクリストフ・ヴァルツを起用し、二度のオスカー受賞がともにタランティーノの作品。
歌多丸がドクター・キング・シュルツを評して快男児と言っていたが、ムチャクチャカッコいい奴なわけよ。
自らも銃を使うわけだけど、シュルツの真骨頂は話術を武器にできること。
話術によって場を制する技術のある好漢。
知性と教養のある、本作で唯一の近代人だと思われる。
シュルツは、自分は人種差別を嫌悪するとか言ってるが、本心ではないだろう。
彼にとってみればアメリカ人の黒人差別などどうでもいいのだ。
おそらくアメリカの人種差別を利用してジャンゴを懐柔するための方便でしかなかったのだろう。
当然であるが日本人であるオイラは黒人差別については昔こんな酷い事がありましたという他国の歴史の知識としてしか知らない。
実は彼の国アメリカでも黒人差別の酷い内実というものが風化しかけているのではないだろうか?
未だに黒人への差別はあるにしても、黒人が大統領になるにいたっては過去の歴史の暗部に対する謙虚な認識が損なわれつつあるのではないか。
かつて原爆アレルギーなどと揶揄された日本であっても同じ。
神経質ぐらいでなくてはいけなかった筈の原子力に対する危機感も徐々に薄れて、チェルノブイリでさえ対岸の火事ぐらいの認識の驕りが、2011年3月11日以降の原子力発電所の有様によって如何に全日本国民が腑抜けていたかが露呈した。
本作について映画監督のスパイク・リーが
「人種差別はホロコースト』
だと言った。
黒人差別が本作で描かれた程度のものではなく、ましてやエンターティメントで表現されるべきものではないという事なのだろう。
スパイク・リーが黒人差別をホロコーストであるという最上級の強調をしなければ伝わらないような状況にアメリカもなっているのではないか。
本作のドクター・キング・シュルツに対して近代人であると感じると同時に、彼に現代人の目線を与えたのではないだろうか。
黒人との付き合いや言葉によるやりとり、黒人奴隷の殺し合いや陵辱に対して不快に感じるドクター・キング・シュルツのそれは現代人がその場にいたらするであろう反応ではないか。
オイラもシュルツの目線で物語を追い、同じような感情を共感として観ていた。
ただそんな近代合利主義者のシュルツをして、彼の国の人種差別は我慢の限界を越えたのであろう。
賞金稼ぎとして金を稼ぎにきた。
ミシシッピーの農場で死ぬ事などまるで考えてなかった。
あの場の黒人に対する行為が行われる世界観に身を任せてさえいれば、ジャンゴの妻を解放し、シュルツとしては損はしたが、無事にあの場から去る事が出来た筈なのだ。
どんな悪辣な奴であっても握手さえできれば......。
シュルツにとっては忌々しい最悪の場で自分の祖国の作曲家であるルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの『エリーゼのために』が美しく奏でられるのも我慢ならなかったのだろう。
この場所でこの曲を聴いたら、この曲を聴く度に悪夢のような情景を思い出してしまうから。
(このあたりはスタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』かな)
近代合理主義者だと思っていたシュルツも合理的に処理出来ない感情があったのだ。
自分が思ってた以上に酷い黒人差別の現実を目の当たりにし、憤りと、義憤にかられ、自分の信念と美学を曲げる事ができなかった。
この辺りがオイラが彼にものすごく好感をもつところなんだよね。
近代合理主義者が理性をなくす。
それがかつての黒人差別だ。
ものすごくまわりくどいが、タランティーノはドクター・キング・シュルツの存在によって黒人差別の悪辣さを感情とともに観客に示したんだと思う。
まあそんな具合で本当にドクター・キング・シュルツが好きになったよ。
礼儀も教養も乏しかったジャンゴに、それらを教え込んだのもシュルツだ。
最後にジャンゴはまさにシュツルからの闘魂伝承(笑)。
かつてシュルツがやったように言葉によって状況をひっくり返して反抗にでた。
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物置小屋で何も言わず静かに横たわってるシュルツとの再会が感動的。
シュルツはジャンゴに新しい時代のための生き方を教えた。
とにかくシュルツでもってるような本作であるが、もうひとり
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カルビン・キャンディ役のレオナルド・ディカプリオ。
この演技で彼がオスカーとれないのは可哀想だよな。
まあ同じ助演でクリストフ・ヴァルツがオスカーをとっちゃったからディカプリオが割をくった感じなんだろうけど。
ちょっとこの演技はすごいね。
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このシーンでテーブルを叩いたディカプリオの手が血だらけになっていくんだけど、これは本当にハプニングで血が出ちゃったのを使ってるんじゃないかな。
すごいテンションで演技してた。
最高だと思う。
あとはタランティーノが本作でも過去の映画の引用を沢山つかっているが、実はオイラが明確に分かったのは
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これだけ。
『ピンクパンサー』の有名なカット(笑)。
ピーター・セラーズ扮するクルーゾー警部が地球儀によりかかろうとしてずっこける有名なやつね。
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タランティーノ、肥えたなあw
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爆死の瞬間(笑)。
最後にタランティーノ映画の常連
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サミュエル・L・ジャクソン。
今回も期待の台詞、
「マダ ファカ」と
「サノバビッチ」
を断末魔に(笑)。
とにかく痛快である種の感動を得られる映画。
オススメよん(笑)。
by 16mm | 2013-08-17 00:23 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Trackback | Comments(2)
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Commented by chata at 2013-08-18 23:33 x
タラちゃんの爆死をはやく観たいw
プリオさんは『オスカー獲れない俳優』として定着した感がありますねぇ。
Commented by 16mm at 2013-08-18 23:58
■re:chataさん
すいません、ネタバレしちゃいましたね(笑)。
なかなか豪快な死に様でした(笑)。

プリオさん、本当に嫌われてるんかなあ。
オスカーって同業者や製作者の投票なのになあ。
ここまでくると可哀想である。


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