『Mr.インクレディブル』

『Mr.インクレディブル』のDVDを買った。
もはやDVDに日本語吹き替えがついているのは当たり前になっているが、吹き替え毎に本編のカットも微妙に変わってる。冒頭の制作会社のクレジットや、新聞の見出しがでるカット等が日本語に置き換えられているのだ。当然字幕になれば英語表記になる。

初見は劇場で観ていたのだが、やはり面白い。



この面白さというのがどの辺りからくるのか考えてみると、日常の描写を丁寧に描いているからではないかと思われる。
では実写映画なら日常というものは簡単に描けるか?生身の人間の役者がやるのだから日常は普通に描けて当然だ。
と、思ったら大間違い。なんでもない日常というのはかなり意識しないと実写でだって描写出来ないものなのだ。比較的非日常の殺人犯なんかの方が演じる方としても面白いだろう。
飯を食って寝る。飯を食う為の生活の糧はどこから得ているのか?昼夜動いていて寝る時間がないのに身体が弱らないのか?etc...
ストーリーに起伏を持たせ飽きさせないようにしながら、このような要素を取り込むのは至難の技だと思われる。
実写以上に最初から作り物の枷をはめられたアニメーションというジャンルにおいて、こと日常性というものを作り出すのには並々ならす才能と努力が必要だ。
なぜ日常描写にこだわるのか?
「しょせん絵空事だろ」と観る側に思わせない為だ。
絵で描いた世界でも、観てる自分と同じような世界で進行してる話だと思えた時に初めてそこで展開される突飛なドラマや人物に感情移入ができるからである。
観てるとなんでもないんだけど
●赤ちゃんにご飯を食べさせている時の母親のスプーンを持つ仕草と顔の表情。
●肉を切らずにかぶりつく子供の食べ方。
●海を泳ぎ切って疲れた所(スーパーヒーローも疲れるわけだ(笑))
作り手が自分の日常や他人の日常を客観的に見て覚えていなければできない描写だ。
監督もコメンタリーで言っていたが、ピクサーは細部やニュアンスに徹底的にこだわるという部分の面目躍如であろう。

ちなみに私のお気に入りは後半の戦車や兵隊が出てくる所やカーアクションのシンである。
特にカーアクションは初見の時も感心した。凶悪な車社会でないとこのようなカット割りはできないだろう。
同様に実写を使って撮影したとしてもこれほどのカーアクションにはなるまい。徹底して観る側の快感曲線に乗っ取った描写をしていると思うのだ。
つまり外れて欲しいと思う所でホイールカバーがふっとび、カーブを曲がる時の車体の傾き方や、バウンドを抑えるサスペンションの効き方等が徹底的な計算と演出力で成立しているのだ。
作り手のセンスで最高の描写ができるのがアニメーションの実写に対するアドバンテージだと思うが、あくまでも作り手にセンスがあった場合のみである(笑)
偶然性の多いであろう実写のカーアクションではできないだろう(最近は実写であってもCGをつかってカット内容をコントロールできるだろうが)。

ピクサーの映像の質感というのは、他のCGアニメーションと一線を画しているといってもよかろう。一言で言えば彩度を抑えソフトな絵になっているという事だ。
ピクサーがこれだけの質感を持たせる事が出来ても他で制作したCGアニメーションではそれが出来ないというのは(作品内容として必要ないからという部分はおいといて)かなり高度な技術なのだろう。
皮膚の描写、シャツの皺に非常にリアリティを感じるのだ。

日本のアニメーションに比べればキャラクターのオーバーアクションはあるものの、ミッキーマウス映画と違うのはカットに明確なカメラの焦点距離を意識した構成をとっていることだ。これはアメリカのアニメーションでは可成り珍しいことではないのだろうか。
それが所謂"映画的"になっていると思う。

悪役であるシンドロームであるが、彼を配置する事により才能をめぐる話でもあるなと感じた。
持ってないが欲しい才能というのは誰にでもあると思うが、それをむりやりあると思う事の危険性というのは、オイラも自戒せねばなと思ったりした。
by 16mm | 2005-06-18 19:57 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Comments(6)
Commented by ちゃた at 2005-06-18 23:47 x
ピクサーにハズレなしですな。Carsも楽しみ。
バットマンビギンズ観てきますた。さてどとはんはどんな評価を下すか?(笑)
Commented by 16mm at 2005-06-19 08:45
アカデミー賞のアニメーション部門はこのところピクサーの独壇場でしたけど、今年はピクサー作品が公開されないので他の製作会社は躍起になってアニメーションを作ってくるんでしょうねw

『バットマンビギンズ』観ましたかw
オイラも観ましたw
Commented by the_interpreter at 2005-07-05 14:55
僕は一番最初、『バグズライフ』の時に、
日本語にすると一部英語表記が日本語に替わることを発見。
スターウォーズ(少なくともエピ1と2)のDVDもそうなってるよ。
Commented by 16mm at 2005-07-05 22:01
ほほ〜、『スターウォーズ』もですか。知らなかった。
知り合いに聞いていみます。
しかしアレですなあ、そうなってくると、いったい何処の国で作られた映画なのか分かんなくなりますねw
良い事なのかどうか分かりませんがw
Commented by 朽駄 at 2005-07-12 12:35 x
ピクサー・インクレディブル面白かった。
あれだけ精巧にできていると、一つのカットの中でも、
脇でセリフをしゃべっていないキャラクターの
細かい動きまでかなり可愛い。
フロゾンの吹き替えなんて、解ってないとできないと思う。
あのキャラクター大好き。
Commented by 16mm at 2005-07-13 17:30
朽駄さんへ。
日本語吹き替えの三浦友和も黒木瞳もよかった。
今まで観たピクサーの日本語吹き替えも結構ハマってる役者が声をあててるんだよね。
あのエキセントリックなデザイナーもいいですね。元の声は監督のブラッド・バードだったりしますが。
同じ監督の『アイアンジャイアント』もオススメですぜw


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