『宇宙戦争』

土曜日『宇宙戦争』を劇場で鑑賞。
面白かった。



スピルバーグによる新たな戦争映画の構築の試み。
兵士のようなドンパチの派手さの無い銃後の民間人の話をエンターテイメントとしての映画にする為の方法論をスピルバーグなりに構築したのだと思った。
その方法論とは、アメリカの所謂<9.11>事件の影響の取り込みである。
その影響を映画の映像として再構築することにより宇宙人の襲来というもっとも荒唐無稽な物語に、既視感を伴ったリアリティを与えているのである。
それは成功している。
橋が転げるように破壊される様や、逃げ惑う人々。行方不明者を探す立て看板。ビームに当った人間が粉々になって四散し空に舞い上がり、それが雪のように降ってくる。そしてその雪にまみれたトム・クルーズの姿。
そのどれもが件の貿易センタービル倒壊時を想起させる。
日本でニュース映像だけを観ていたオレが感じたぐらいだから、当事国のアメリカ人にはもっとリアルに恐怖を感じる映像だったと思う。
たとえその切り口を商売の道具にしたとしても、オレは非難や嫌悪をしているわけではない。スピルバーグが戦争映画の新しい切り口を見つけたのだと思うからだ。
スピルバーグはあの優しげな風貌と、どんな映画のラストでも希望を描く(それがたとえ泥船に乗った希望であっても)ので気が付きにくいようだが、彼は相当に人が悪いと思う(笑)
子供がトンボの羽を毟ったり、カエルを爆竹で吹っ飛ばしたりする、乾いた残酷性がある。それが魅力であるとも言えるのだ。
トライポッドのデザインや、人や物が破壊されていく描写には徹底的に力が入っていた。
河に流れていく死体。得体のしれない宇宙人も恐いが、恐怖に駆られた隣人はもっと恐いという身も蓋もない描写や、それでも残った人間で助けあう描写もあったりと、たぶん思いつく要素全てを入れ込んでいると思われる。
映像的には、ラスト近くでビルに寄りかかるトライポッドの画がすばらしかった。
一種のオブジェのような、終末感漂う画でさえも甘美な魅力があるということか。

役者でいえば、ダコタ・ファニングはすごいな。子役は大成しないなんていうけど、数いる先達(マコーレ・カルキンやハーレイ・ジョエル・オスメントw)の様に早々と消費されなければいいなと思った。
たぶんあの映画では誰よりも役者らしかった。

ところで、観客のオレが堪能できても当のスピルバーグ自身は自分の映像に満足していないのかもしれんと思った。
その理由が冒頭とラストの説明過多で野暮なナレーションだ。
あのCGの映像だけで観客を説得できないと思った時点で、スピルバーグは負けたんだと思う。
あのCGだけでは伝わらないと思ったんだろう。
ナレーションはモーガン・フリーマンである。有名かつ名優である役者のナレーションと言えば『A.I.』でもロビン・ウィリアムスがやっていた。
名優によるナレーションはその言葉に説得力を与える。与えるがそれ以外の解釈を排除するタイトさもある。
作られた映像。特にCGを多用するようになってからのスピルバーグは自分の映像を信じてないように思えるのだ。
『レイダース 失われたアーク』のラストシーンの倉庫でそれを説明するナレーションはあったか?。『ジュラシックパーク』でさえ海を行く鳥の映像を流すだけで余分な説明は無しである。
それが良かったのだ。
論理的に思いつく映像なら確実に作り出せるCGであるが、雑作も無く作りだせてしまうからこそ、それが違和感として感じられ映像自体の説得力にまで疑問をいだき、言葉によるナレーションの多様を生んでいるのではないかとオレは思っている。
苦労して現場で撮影した映像だからこそ説得力があると、スピルバーグは意外とそんな事思ってるのかなと思ったりした。
by 16mm | 2005-07-03 23:29 | 映画・DVDの感想など。 | Comments(16)
Commented by ちゃた at 2005-07-04 07:15 x
トムはパンを窓にビターン!がステキでした。

杏ちゃん主役のドラマ「がんばっていきまっしょい」は観ますか?
ぼくちんは観ません(笑)

スチームボーイ漫画化されましたね。
描いてるの大友さんぢゃないけどね(笑)
Commented by 16mm at 2005-07-04 09:49
ぼく様もトムの窓にビターンは男らしいと思いますたw

杏ちゃんのドラマはどうしよう、一度ぐらい観とこかな。先週の"フライデー"の表紙が杏ちゃんだったので衝動的に買ってしまいました。

ところで、ちゃたさんも言ってたピーター・ジャクソン。アレはどーした事だw
Commented by fuzika at 2005-07-04 14:59
16mmさん>
このたびはトラバでお世話になりました!
あのナレーション、、、特にラストの方は賛否両論だよね。
最後、視聴者に考えさせるケースが多いけど、みんな納得できるからそれもいいし‥
私的には声を出さずに、字幕だけの方がカッコよかったんだけどなぁ‥
Commented by 16mm at 2005-07-04 15:17
fuzikaさんへ。
わざわざのお越しありがとうございます。
映画としては良く出来てるし楽しめたし面白かったんですけど...
ナレーションがモーガン・フリーマンだと文句言えないしねえw
モーガン・フリーマン、好きなもんでw
Commented by ちゃた at 2005-07-04 17:10 x
ピーターどんは「シリアルとヨーグルトで痩せたのサ」と言ってたとか。
ローレライの監督も撮影中は大幅に体重ダウンしてたらしいし・・・
「監督ダイエット」が流行る予感!(´A`)ネーョ
Commented by 16mm at 2005-07-04 20:48
むう、あっちの人達はそうまでして痩せたいかw
もじゃもじゃ髪の毛にヒゲと眼鏡とずんぐりむっくりな感じがキューブリックを意識したコスプレか?などとデブだった頃のピーターどんを見て思ってましたw

さあ、あとダイエットが必要なデブ監督は...『レオン』のリュック・ベッソンか(笑)ヤツはダイエットなんてしなさそうだなあw
Commented by at 2005-07-17 23:56 x
はじめまして、16mmさん。大変興味深いエントリーでしたので、TBさせていただきました。スピルバーグは「ヒューマン性」と「残虐性」が同じ作品内で垣間見られるところが面白いですよね。またおじゃまさせていただきます。
Commented by 16mm at 2005-07-18 08:15
よ さんへ。
はじめまして。ようこそお越し下さいました。
私はスピルバーグの映画で表現してる「ヒューマニズム」って絶対殺戮のシーンを正当化するための言い訳だと思ってます。
ヒューマニズムを表現するには殺戮のシーンを残酷に見せれば見せる程いいという考えもあるでしょうしね。
そうは言っても、スピルバーグのそういう所に観客としての私は反応して観てるので批判はできませんが(笑)
Commented by ルウ at 2005-07-19 23:42 x
こんばんはーv初めてここに書き込みますw
どうしよう、あたし自分の日記でケチョンケチョンに言っちゃったよこれ・・・ていうかこんな深い洞察力も知識もないよ!とガクゼンとなっておりました(冷や汗)
やばい私の学の無さがバレる(もう遅い)

今度からはもうちょっと考えて(?)映画観ようと思いますw(´~`;)
Commented by 16mm at 2005-07-20 10:38
ルウさん、ようこそ〜w
タイトルが『宇宙戦争』という、別に宇宙で戦争してるわけではないのにねえw
"WAR OF THE WORLDS"の方が良かった気がする。
あの手の残酷描写ってのは男の為のものの気がするので、女の子には生理的に受け付けない部分なのかもしれないと思います。
Commented by 偏屈王 at 2005-07-21 21:55 x
こんばんは。
リンクしていただき有難うございました!
私もリンクさせていただきました。
これからも宜しくお願いします。
Commented by 16mm at 2005-07-22 09:23
偏屈王さんへ。
相互リンクとなりまして、うれしいです。ありがとうございます。
宜しくお願いします。
Commented by 偏屈王 at 2005-07-23 10:36 x
ビルにもたれかかる、トライポッドの映像、よかったですよね。
不思議な「詩情」があるというか・・・。
不気味さと共に、この災厄も終わって行くのか、という何か明るい開放感とが同時に感じられて・・・。
Commented by 16mm at 2005-07-23 23:59
ああいう映像を観せられると、やっぱりスピルバーグは映像に強いなと思いますね。その辺りはジョーズから変わってない。
Commented by ろーそ at 2005-09-01 20:54 x
コメントありがとうございました。
映像は凄かったですよね・・・ただ話はもっとアレンジしても良かったと思いました。昔のSFの設定を現代に持ってくると結構違和感が・・・
Commented by 16mm at 2005-09-01 22:43
ろーそさんへ。
才能も、その才能に金を出す人もわりかしいて。好き放題の映画を撮ってきて煮詰まってきた所もあるんでしょうか。
再来年以降本格化するらしい3D映画で新しい事をやってくれたらいいなと思ってます。


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