『ジャーヘッド』

今度からシネコンの会員になった。6回行くと招待券が一枚貰えるので比較的劇場に足を運ぶオイラにはオトクであろう(笑)

『ジャーヘッド』を初日の初回で鑑賞。
期待をしていた映画であったが、どうも退屈してしまった(笑)



冒頭の訓練キャンプで罵詈雑言を新兵に浴びせる描写、戦場でのロングショットや、アンマッチなポップスの選曲まで、予想どうりの『フルメタル・ジャケット』からリスペクトされた映画と言えるだろう。
もっとも監督自身はそれ自体には言及していないようだが。
イギリスにいると(キューブリックはアメリカ人であるがイギリスに住んでいた)自然とアメリカに対するシニカルな見方が似てくるのかもしれない。
訓練の内容ってのは『フルメタル・ジャケット』のベトナム戦争からまったく変わってないのだなと思った。
ある意味訓練所の方が殺気だった戦場の空気を醸し出していた。
個人の人格を完膚なきまでに打ち砕く訓練教官の存在。銃を撃ち、訓練に明け暮れ、訓練中に死ぬ。

その分サウジアラビアに赴いた兵士は実にのびのびとしていた。
この映画では敵兵は出てこないので、会敵してドンパチというのがない。
あるのは会敵した時の準備と、どこまでも続く砂漠。そして果てしない無為の日々。退屈な日常との戦い。
大変な事態と言えば、ドンチャン騒ぎのただ中ボヤをだして慌てたこと。見方に誤射された事。
敵の存在とは無縁な事で大変な事態というのが起こっていた。
そして、スカウト・スナイパー(斥候狙撃兵)として戦いに来て結局敵に向け一発の銃弾も撃たずに戦争は終わる。
力を象徴とするアメリカであっても、それは誇示するためのものであり、戦争自体は政治的な駆け引きと情報戦でのみ行われているにすぎない。

そもそもである。
現代ここ数年(ベトナム戦争以降といってもいいかもしれないが)戦争で決着がつかない事ばかりだった。冷戦が終わって核の運用もおしまい。
悪の帝国に正義の兵隊が攻めて行き、核爆弾を落として制圧。平和な世界ができました......という呑気な妄想は少なくとも前線に出ている兵士以外の制服背広組にはない。
兵士としては戦場のまっただ中にいて戦争の決着に間接的にしか関われないという事にどこか歪さを感じているのかもしれない。
その苛立は後半敵を狙撃しようとし、その直前で爆撃をするので中止を言い渡される所で爆発する。

横道に逸れる。
アメリカ兵やアメリカ人に自覚はないだろうが、イラクからすれば彼らこそがテロリストであり侵略者にすぎない。そしてその侵略に抵抗するイラク人たちをテロリストと呼び、結果的に無数のレジスタンスを作り出していると言える。
アメリカが力で押し通し、核兵器で相手国を無力化すれば、少なくともアメリカ側から見た理想の決着にはなったであろう。
しかし、それが出来ない。
戦争はもはや究極の決着方法ですらなくなったのだ。

これはある意味世の中を退屈にさせる事態だ。

会敵してドンパチをやってれば...などと言うつもりはない。
しかし前線兵士が戦場でこんなに暇だからアブグレイブ刑務所などでイラク人に対するバカな虐待拷問をしてたわけだなアメリカ兵は。

実は観ていたオイラもこの映画を退屈してしまった。
如何に新しい戦争映画の提示と言いつつも、やはりオイラが期待していたのはドンパチだったと自覚した(笑)
画や内容は非常に考えられたものになっていたが、緊張感あふれるドンパチ、スプラッタなドンパチ、なんでもいいがドンパチがないことが非常に物足りなかったわけである(笑)

劇中『地獄の黙示録』を歓喜の声で観ている兵士を見て、コッポラがまったくそんなつもりはなくても、あの映画は戦意高揚の糧にされてしまうんだな。そのアメリカ人のメンタリティに愕然とした。

アメリカの兵士が着ている砂漠での迷彩服ってのは、あの場所では上手く機能していて見えにくいという事が分かった。
だから日本の自衛隊のグリーンの迷彩はすごく目立って迷彩にはならなかったろうな。

砂漠を行く兵隊を広角レンズでとらえ、奥に石油を吐き出しボーボーと燃える炎を配置(燃える炎はたぶん合成だろな)した画はこの映画の中で最もに印象的であった。



先週に引き続き『ライフ イズ コメディ! ピーターセラーズの愛し方』再度観る。
晩年の傑作『チャンス』の役作りに自分の父親を思い浮かべて役作りをしていた。
それまでの母親をイメージした役作りからの脱皮だったんだなと思った。
急に『チャンス』が観たくなって、DVDを買いに。新品が690円で売ってたので購入。
DVDも安いのは安いんだねえ。
by 16mm | 2006-02-12 22:05 | 映画・DVDの感想など。 | Comments(13)
Commented by Y at 2006-02-15 00:28 x
コメントありがとうございました。
たしかに退屈な部分も多いと思います。
それもまた制作の意図の内なのでしょうか。
まあこの作品は戦争の意義を問うよりも
普遍的な若者の葛藤にフォーカスした
青春映画だと捉えてるのですが
反戦とはまた違った部分で
アメリカの憂鬱を描きたかったのかなあ
なんて考えてます。
Commented by Yin Yan at 2006-02-15 00:29 x
↑あ、また名前が抜けたm(_ _)m
Commented by 16mm at 2006-02-15 11:19
Yin Yan さん
こんにちは。書き込みありがとうございます。

>普遍的な若者の葛藤にフォーカスした

これはものの見事にこの映画をあらわしてますね。
戦場を学園にして上官を教師や先輩にあてはめれば学園ドタバタになるような映画だと思いました。
たしかに大上段に振りかざした戦争の意義というのを語っていませんでしたね。
というよりも戦争の意義や反戦や反反戦を問えない程に、戦争自体の有効性というものが無くなってしまったんだと思います。
戦争は酷いのではなく、下らなくなってしまったという事だと思います。
Commented by いも at 2006-02-16 00:51 x
はじめまして。コメント有難うございます(^^)
私は試写会で観たのですが、この映画はCMの映像と音楽がとても印象的なので、期待して観に行く方も多いかも知れないですね。
元がノンフィクション小説ということで、否定はしないのですが、エンターテイメント性に欠けるという意味で私も個人的には評価低めです。
キューブリック作品がお好きなんですね。
私は「アイズワイドシャット」がものすごく好きなんですが、これ好きっていう人なかなかいないんですよ(^^;
Commented by 16mm at 2006-02-16 08:37
いも さん
こんにちは。コメントありがとうございます。
私はこの映画の予告編をを昨年のショービズで観てずっと楽しみにしてたんですよ。おっしゃるとうり、油田をバックにした映像と本編ではラストにかかる音楽が印象的でしたね。
あくまでも他との比較ですが、エンターティメントと言う意味では私も評価低いですね。決して悪い映画ではないんですけど...。

私はキューブリック主義者にしてキューブリック原理主義唱えているものですが(笑)私も『アイズ ワイド シャット』は大好きなんですよ。この映画なんか不当に世間の評価が低いような気がしてるんですけどね(笑)
『時計じかけのオレンジ』『シャイニング』『2001年宇宙の旅』『博士の異常な愛情』『ロリータ』
彼は寡作な映画監督でしたけど、約10本の映画で充分に満足してます。
唯一失敗作で観てて面白く無かったのは『スパルタカス』だけですから(笑)

今後とも宜しくお願いします。

Commented by hide at 2006-02-18 10:17 x
16mmさんコメント&TB有難うございました
最近アメバブログが夜間不安定の時が多くご返事が送れスミマセンでした。
>コマを無駄死にさせないようなシステム

ブッシュ親子で確立したのでしょうけど

>つくづく戦争でケリがつかない世の中になったと思います。

本当にそうですね。アメリカは宗教とか民族とか憎悪とか無視している側面が有るから。テロは止まらないし、上記のシステムでは対応できないから、警備の民営化を容認してるそうですから。あきれます。
Commented by 16mm at 2006-02-18 19:41
hideさん。
こんばんは。コメントありがとうございます。
国家間の調整装置として戦争が機能しなくなったと思います。
だから戦争なんて百害あって一利無しですやね。国土と国民を疲弊させるだけ。
この戦争は正義だ、などと行った所で誰も信じないでしょうしね。
会社で滅私奉公しちゃうような生真面目な人間が真っ先に死んで、愚劣な奴がまともになる事もなく姑息に生き残るのが戦争だと思ってます。
Commented by rohi-ta at 2006-02-19 01:37 x
16mmさん、TB&コメントありがとうございます。 確かに、この映画はアメリカを冷笑するような雰囲気がありましたね。 イギリス人がこの作品を作った事に意義があるのかも知れませんね。 それでは、また!
Commented by 16mm at 2006-02-19 09:00
rohi-taさん。
コメントありがとうございます。
イギリスから見たらアメリカは歴史の浅い伝統のない国だと見下してるような節がありますよね。
米映画でも英人の俳優を入れると映画自体の格式や重さがでるんだそうです(笑)まあ、たぶんアメリカ人のイギリスコンプレックスみたいなものかもしれませんが(笑)
Commented by toe at 2006-02-21 01:45 x
こんにちは。

コメントありがとうございました。
この映画、私は面白く見たのですが、あまり評判が良くないみたいですね(^^;)
アメリカで命を落とすかもしれないような過酷な訓練をした兵士達が、実際戦地に行ったら何もすることがなかったという現実がとても空しく、無駄なことに感じました。
いろんなことを考えさせられる映画でした。
Commented by 16mm at 2006-02-21 08:59
toeさん。
コメントありがとうございます。
決して面白くない映画ではないと思うのですが、私もなんだかんだ言いつつ期待してる戦争映画の定石というものを外されると物足りなくなっちゃうんですよね(笑)
つまりドンパチがなかったって事なんですけどね(笑)
最近の戦争ってのでも実際にも会敵してドンパチってのはあり得ないのでしょうけど、そうすると戦争をリアルに描こうとすればするほどエンターテイメントとしての戦争映画はつまんなくなっちゃうんだろうなと思いました。
Commented by ska-n-tastic at 2006-03-02 00:51 x
コメントありがとうございます。
いえいえ、僕もキューブリックは大好きです。この人も選曲のセンスが抜群ですね。
ウェンディ・カーロスの「時計仕掛けのオレンジ」や「シャイニング」が好きです。
Commented by 16mm at 2006-03-02 13:45
ska-n-tastic さん。
こんにちは。わざわざのお越しありがとうございます。
『時計仕掛けのオレンジ』のサントラはベストですね。あのサントラを聴いて基のクラシック(ロッシーニ『泥棒かささぎ』やベートーベン『第九』)を聴いてみようって気になりましたから。


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