『ローズ・イン・タイドランド』『あのさよならにさよならを』

『ローズ・イン・タイドランド』
小規模公開で東京では2館のみでの上映だがテリー・ギリアムの監督作など誰も観にいかねーんじゃねーの、とタカをくくっていた。
したら、新宿の小さな劇場ということもあるが、土曜日初日の3回目に行ったら定員で120パーセントぐらいの入り。
たぶんこれまでの映画小僧から映画オヤジになるまでで、初めて立ち見を宣告されてキップを買った(笑)
幸いにも通路に座布団しいて観る事ができたが寄りかかれないのは辛いものである(笑)
テリー・ギリアムの最新作『ローズ・イン・タイドランド』を観てきた。
なんでも前作の『ブラザーズ・グリム』でプロデューサーとモメてる間に撮ったとか。
ジェフ・ブリッジスも出ているが、映画自体はかなりの低予算で作られているらしい。
明らかに『ブラザーズ・グリム』よりギリアム色が濃い。というよりも今までのギリアム作品と比べても一番濃い作品であると思われる。
そういう意味では『ブラザーズ・グリム』より楽しめた。
大衆という有象無象を相手に自分のヴィジョンを薄める事なく出してるので、観る人によっては嫌悪もするだろうし失敗作だと断罪もするだろう。
オイラに至っては、面白い面白くないではなくただただ圧倒されてしまったという所だろうか。
今気がついたことではないが、ギリアムはやはり映像派である。観客が少しであっても理解できると信じれば説明などせずに映像のみで語ろうとする。
マイクロバスを逆さにして普段見えないシャフト等が見えるだけで画面が面白くなる。
枝の形が良い樹を俯瞰でなめて行くカメラワークも良い。
このような映像のアイデアはギリアムの面目躍如だ。
話自体も結構アブナイ事を盛り込んでいる。バジェットの小さい作品だからできたという事ではあるであろう。
バジェットを大きくして不特定多数をターゲットにするには、かなり危険な地雷が多数敷設されていた(笑)
あの主人公の女の子はギリアムだ。
首だけで心臓(ハート)のない人形を指にはめて対話をし、父親の死や大人がしてるセックスに至まで空想と妄想に当てはめて自分の中に昇華していってる。
死臭漂う中で父親の身体が崩れ落ちていく様をずっと見続けている。それはあの女の子の好奇心を刺激することなのだ。
キスをしてみたい、好きな男のオチンチンを観てみたい......etc
文章化すると非常に倒錯した世界のみしかすくい上げられていないが、ギリアムはそれらを真っ当に非常に肯定的に描いている。
ギリアム自身がネクロフィリアの趣味があってロリコンだという事ではない。...いや、分からないが(笑)
ほんとうにそれらの趣味があるならあそこまでストレートに描けまい。
オイラだって子供の頃死体があれば見てみたいと思ったろう。全くの興味本位でしかないそのような感性は大人になるにしたがって、分別であるとかタブーであるとかに抑圧されていく。
最初は興味本位で死体というモノのみへの興味が、抑圧によって歪んだ形に変異してしまうことがある。
押さえつけられた好奇心は容易に歪んだ性衝動と結びつき易い。
別に女の子がオチンチンを見たいと言ってもそれが直接性に結びついているわけではない。監督がそのような意図を込めてはいない。
この映画は純粋に好奇心のみを軸にした作品である。
そんな映画説得力を持たせたあの小さな女優は非常に上手いと思った。
女の子に限らずギリアムの女優のチョイスは日本人好みなのではないだろうか。
ジョージ・ルーカスにしてもスピルバーグにしてもジム・キャメロンにしてもイマイチ日本人には馴染めない女優をチョイスするんだよね(笑)
妄想の果てに起きたラストの惨劇は、あの女の子の空想の世界の終わりを告げるものなのだろうか......
あまりのギリアムの個人的な妄想の世界に、もう観る事もないだろうなと思っていたのに、こうしてつたないながらも文章化したらまた観たくなってきた。
あのラストの女の子の眼は『オーメン』のダミアンだろうか?
たぶん購入するかどうかは別にしてDVDが出たら再見することにしよう。



『あのさよならにさよならを』
最近めっきり音楽を聴かなくなった。CDも買わないしレンタルもしない。
年に一回でる中島みゆき様のアルバムだけは確実に購入している。
で、『あのさよならにさよならを』。
作詞作曲中島みゆき様。ヴォーカルは華原朋美。
いくら中島みゆきの作詞作曲であっても他の歌手が歌ったモノは興味がないのだが、ネットでサンプルを聴いたら猛烈に欲しくなって購入。レンタルしようと思ったがツタヤになかったのだ(笑)
華原朋美の声というのは喋り声と歌声にギャップがある。
小室哲哉と組んでいた頃は<たぶん小室の意向であろうが>彼女の歌声も楽器の一つとしてサウンドの要素として機能していた。
その頃もなかなかに魅力的な声ではあるなと思っていたが、やはりサウンド指向の小室の楽器以上のものではなかったと思う。
それが『あのさよならにさよならを』では楽器としての歌声ではなく、自分の肉声としての歌声で雄弁に語りかけてきた。
実に凛々しくて心地よい。
なのでi-Podに入れて今日一日中リピートでそればかり聴いている(笑)
今もかけっぱなしである(笑)
こうなってくると同じ詞で中島みゆき様の歌声も聴いてみたいところである。
今までなら他の誰が歌っても、比べるまでもなく中島みゆきが歌った方が良いに決まってると思っていたわけだが、ちょっとこれは聴き比べてみたいと思った。
しかしトモちゃんもこの詞を歌えるぐらいの人生経験をつんだということであろうかね。
by 16mm | 2006-07-09 21:32 | 映画・DVDの感想など。 | Comments(2)
Commented by clumberg01-fury at 2006-07-13 22:32
TB&コメントありがとうございました!

ギリアムの映画作品は数年ぶりに観たんですが、相変わらず疲れますね。
なんというか、体力を消耗しました。

私もDVDが出たらまた観ようと思ってます。
いろいろと観直したい部分もあるんですが、空想と現実の隙間に居心地のよさを感じて、ただただ浸っていたいような気分になりました。
そういった意味では、ギリアムの言ってたことは当たってるのかもしれないですね。
女だからそうだったのかはわからないですが、少なくとも私は割とすんなりあの世界に入り込めました。

それでは、長々と失礼しました。
またあそびにきます!
Commented by 16mm at 2006-07-14 08:38
■re:clumberg01-furyさん
ども、お越しくださりありがとうございます。
おっしゃる通り、ギリアムの映画は疲れます。
そういう意味では『ブラザーズ・グリム』はちょっとヌルかったかもしれません(笑)ギリアム自身は出来上がりに満足しているとは言ってましたが......
私もDVDの特典映像、メイキングを楽しみにして待ってようと思います。
今後とも宜しくお願いいたします。


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