『日本沈没』

初日の初回にさいたま新都心のコクーンで。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』も『ブレイブ・ストーリー』もイマイチ食指が動かない。
いっその事『ゲド戦記』まで観るのやめようかと思っていた。
それでもイマイチ気乗りがしないながらも件の映画を鑑賞。
......
まあ好みの問題でもあろうが、オイラには非の打ち所がない映画に思えた。
面白かった。傑作だと思う。
買うぞDVD、お金持ち版(特典がいっぱいついてお高いバージョンのDVD)(笑)



オタクな監督だと思ってた樋口真嗣監督。よくぞ一般にアピールする言葉を身につけた。
原作を踏襲しつつも、ほとんど換骨奪胎と言って差し支えないであろう。
だいたいラストが原作と違うわけなので樋口監督のオリジナルと言っても間違いあるまい。
全てがオイラ好みである。
以下好きなシーンを無作為に列挙。

●火の粉や雪のように舞う火山灰の降る風景の美しさ。そんな終末感漂う状況でさえ映像は甘美である。
福井晴敏の『Op.ローズダスト』のラストシーンもこんな風ではないだろうかと。こういう画がSFなのかもしれん。

●飛行場での石坂浩二と大地真央の対話。
窓から入る逆光線の照明と、その窓の右から左に旅客機の垂直尾翼が移動するアイデアが良い。
何もしないでいるという選択肢もあるという二人の対話。
総理大臣としての立場上個人的な感情では動けないジレンマに引き裂かれ苦悩する石坂浩二の演技が非常に良い。
この人の演技、小器用な感じで鼻につく事もあるのだが、今回の役の演技は良かったと思う。
ただ髪型がコイズミっぽくていただけない(笑)

●この映画の照明が自然光っぽいリアルさがあった。実際はどうか知らんが(笑)
豊川悦司と大地真央が研究室にいるシーン。大地真央の背後の窓からさす光が綺麗であった。

●國村隼演じる所の野崎亨介内閣官房長官。ある意味悪役である。台詞に理想や希望的観測を排除したタイトさがあり、国を動かす者の鳥瞰的というか俯瞰的というか、悪魔的な神の目線からくる言葉に説得力があった。
こういう説得力のある悪役の考えを、どうやって最後に否定できるかがエンターテイメントとしてのカタルシスなのである。
それはラストでものの見事に成功していると思う。

●草なぎ剛と柴咲コウの関係のストイックさが良かった。
有り体に言えば二人のセックスシーンがないというのが非常に好感がもてたのである。
あの関係というのは兄と妹に置き換えられる関係であろう。
観た限りにおいて二人の間に所謂男女間の愛情というのは希薄であったと思う。
それが守りたい者はセックスした女だという視点ではなく、血を分けた肉親や家族への愛情という、より一般的かつ広範な動機づけになってると思われる。
セックスなんてしちゃった日にゃ、それまで積み重ねてきた緊張感が台無しである。
ヘリポートでの二人の今生の別のシーンもセリフなしの映像が良かった。
ヘリのローターが回り、灰が舞い落ちる場所でのスローモーションの描写。
台詞に頼らず歌と<果たして本当にその歌がそのシーンに合っているかは別にして...オイラには判断つかないが...>映像で情感を盛り上げるという方法を使うのは勇気がいったたろう。
ただ台詞にしたって「生きて帰ってきて」とか「行かないで」のようなものになるのは眼に見えている。そんなものは台詞にせずとも今まで積み重ねてきたシーンで二人がどう思っているのか伝わってるものだ。
伝わらなかったというバカは観なくてよろしい(笑)
柴咲コウがヘリを最後まで見送らずバイクで走り去る所に、覚悟を決めた人間の強さと悲しさが上手く出ていた。
今生の分かれというのを知っていて、その覚悟を二人で分かち合う事ができた瞬間であったろう。
女々しくヘリが消えるまで見送るというのも劇的な効果としては悪くないかもしれないが、やはりこれは男と女ではなく、肉親の関係なのだ。
肉親なら覚悟して決めた事を自然に受け止めて、その後の事態を背負い切れるだろう。
そんな強さがあのシーンにあった。
そんなわけで、ラストの草なぎ剛の行動で『グスコーブドリの伝記』を思い出した。

●そもそも日本が沈没するメカニズムが荒唐無稽なハッタリなわけで、原作が書かれた当時と同じ理屈では説得力がないわけである。
今回の映画では原作の理論を踏襲しつつも、新しく理論を付け加えて説得力を増す為の努力が伺える。
しかし、どんな理屈であってもCGによる沈没のメカニズムの説明シーンや、N2の連鎖爆破の映像に力があったからこその説得力であろう。
あのラストの映像があったから、疑わしいN2連鎖爆破による日本の沈没回避の方策も説得力があったのだ。
(本当なら"N2"などと言わず"原子爆弾"と言いたかったところだろうが......やはりそれはオイラとしてもいい気はしないわな......『トゥルー・ライズ』や『アルマゲドン』のような能天気さを日本の映画でやられると気分的には退きますますやね)

●画面の切り替え時に挿入される日本列島の衛星軌道からの映像は、その時々の日本の状態を客観的に観させる事で、各地域での災厄を具体的に見せる事なく観客に想像させる事に成功している。

●佐藤江梨子がカワイク見えた(笑)

●カメオ出演者達をほぼ全部目で確認できたのは嬉しかった(笑)
僧侶役のトミノ。福井アニキ夫妻。飛行機で逃げる庵野夫妻。身を挺して活躍したピエール瀧(これはカメオとは言えないかもしれんが(笑))。
小野寺の実家の造り酒屋のオカミが和久井映見って、『夏子の酒』じゃん(笑)
その他、役所広司や前田愛も出ていたみたいだが確認できず(笑)
これらのお遊びと、『デスノート』での監督の出演は、私の意識の中では雲泥の差である。
たぶん遊びを挿入するというやり方やセンスというのも実際に存在するのだろうと思う。

気に入らないとすれば、『日本沈没』というタイトルと総理大臣の髪型がコイズミっぽくてイヤだなと思ったぐらいでろうか(笑)

それにしてもSF映画にはなぜかMacintoshが似合う(笑)
あ、『インサイドマン』だか『M:i:III』か忘れたが、それに出てくるパソコンもMacintoshだったよなたしか(笑)
映画にはMacintoshがよく似合う(笑)

樋口監督にはぜひ超ダ作『さよならジュピター』のリメイクをお願いしたい。
by 16mm | 2006-07-16 14:39 | 映画・DVDの感想など。 | Comments(8)
Commented by chata at 2006-07-16 16:41 x
良い作品に出会ったときの興奮が伝わってきましたw
総理の髪型も含めハゲしく同意だす。


樋口監督贔屓を差し引いても良い映画でしたなぁ。
作品にものすごくガンダム的なものを感じました。

どこに?と聞かれると困りますがw
Commented by 16mm at 2006-07-16 23:30
■re:chataさん
もしかしたらchataさん好きかもしれんなあ、と思ってたら最強にアツイ感想を書いていましたね。
オイラとしてもまったく同感で、むしろこういう映画を待っていた人ってのは多いかもしれんなと思いました。
こういう映画とは、思考停止気味な現実主義に、理想が勝利するという事です。
理想を現実化させるためには当然ペシミスティックな現実主義より多くの努力と血を流さなけりゃならんわけであります。
その結果が原作の結末と違う展開です。
冷静に考えれば荒唐無稽な手段であるのには間違いないのですが、それに向けて努力した鷹森大臣や田所雄介博士、小野寺や結城の自己犠牲を観れば不可能が可能になる気になるってもんです。
観る側の感情のコントロールによって荒唐無稽が現実的な力を持って見えるのではないかと思いました。
そういう意味では作り手の上手さかもしれませんね(笑)

続く......(笑)
Commented by 16mm at 2006-07-16 23:30
続き......(笑)

クサナギーニョもミッチーも覚悟を決めた人間の演技が良かったです。
ミッチーなんざ深海でチタン製の耐圧殻の圧壊で押しつぶされたわけだが、最後の瞬間まで取り乱しもせずに家族を想ってる姿は感動ものであった。
こズルク、卑怯に生きる自分というのは何時でも意識できるし、実際そうなってしまう事は眼に見えているが、立派な死に様のモデルを見るという事は必ずしも悪い事ではないなと思った次第。

あの潜水艇の内部のデザインは良かったです。あの手のデザインは無能な人間にやらせると単なるガラクタの寄せ集めな印象になっちゃうんですよね(笑)なんでもかんでもスイッチやコードを垂らせばいいってもんじゃないですよね。その辺りはさすが樋口監督。

>総理と博士が新旧金田一対決
コレ、オイラも気がつきませんでした(笑)まさしくそうでしたね(笑)

>ガンダム的
『Z』と『逆襲のシャア』を思い出したりしました。

今度は『ハチクロ』かなあ、原作知らないけど(笑)
Commented by chata at 2006-07-17 00:50 x
マクロ的かつマニアックな視点でみれるどとはんはすげぃ。
コメントみて気づかされることが多々あります。

最後の爆弾連鎖のキューンって音がアニメ的で好きですw
わだつみの窓から見える見送りさんたちのシーンも良かったなぁ。

けふはパイオーツオブカリビアソを観ようとおもったら激混みで止め。
ブレイブストーリーの文庫買ってホテルに帰りますた。
福井アニキの例もあるし、原作は映画よりおもろいはずだw

あと街を歩いてたら映画海猿のロケ地があってちょいシアワセw
Commented by chata at 2006-07-17 01:03 x
追加…w

『ハチクロ』すか!まったくノーマークでしたがスピッツの曲は久々にすごく良いなと思いましたよ。
例のサイトにプロモあるのでチェックされたしw

ゲドのほかに観るのはスーパーマンかなぁ。Xメンもハルベリー大好きの一点だけで観る予定れすw
Commented by 16mm at 2006-07-17 13:24
■re:chataさん
>わだつみの窓から見える見送りさんたち...
ああ〜、あのシーンは良かった。見送る人たちの表情もよかった。
......思い出した。『アビス』って映画で深海用のスーツを着て潜っていくエド・ハリスとそれを見送る人たちのシーンにも似てるんだ(笑)
あのシーンも良かったなあ。

>『ハチクロ』
サイトのプロモ、確認しました。いい曲ですな。サビの部分がTVの予告編でもつかわれてますけど、結構ドキドキしますな(笑)

『ブレイブストーリー』の作者の宮部みゆきはいいですよ。オススメですね。『ブレイブストーリー』は読んでないけど『蒲生邸事件』が一番すきかなあ。良い小説いっぱいかいてますね。

今週はそんなわけで『笑う大天使(ミカエル) 』か『ハチクロ』かなあ。
どっち観るかな。どっちも観ないかもしれんが(笑)
Commented by chata at 2006-07-18 03:17 x
『笑う…』の原作者は花とゆめによく連載してたあの人ですかね?
だとしたら、あの独特のほんわか感を映像化できるのか気になりますなぁ〜
Commented by 16mm at 2006-07-18 09:11
■re:chataさん
原作はまったく知らないのですが、興味の対象は上野樹里のみである(笑)

ところで、寝不足お疲れ様です( ̄ー ̄)ニヤリ


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