『フラガール』

土曜の会社帰りにさいたま新都心の映画館にて鑑賞。
数日前まで観るつもりなかったのだが、信じられないぐらい良い評判ばかりだったので観る事にしたのだ。
『Always 三丁目の夕日』も『スウィングガールズ』もさほど期待しないで行ったにも関わらず、劇場を後にした時には、右肩に向かって急上昇した感動の感情曲線で幸せな気分になっていた。
『フラガール』にもそんな事を期待せずにはいられなかった。

んで......まぁ面白かったです。



場面ごとに数回、感動的なシーンがあって目頭にこみ上げるものがあって、その時は「う〜ん、良い映画や...」と思えた。
が、観終えた後の感動がイマイチ持続しない。
『Always 三丁目の夕日』や『スウィングガールズ』のような数日、或は、DVD発売まで続くようなある種の熱狂が『フラガール』を観たオイラにはなかったのだ。
ひとつにはこの映画の構造が『スウィングガールズ』に酷似している、というかほぼマンマという部分で盛り下がった。
はっきり言うが、『フラガール』が『スウィングガールズ』のパクリだなどと言うつもりは毛頭ない。
物語の構造というのはある程度パターン化しているものであり、『スウィングガールズ』だって数々の映像作品の構造を踏襲しているに違いない。
違いないというのは、その元ネタを感じさせないような脚色が上手いということに他ならない。
ただ『フラガール』については、その元ネタを感じさせないという部分で幾分楽をしている風に感じたのだ。
同じような構造をもつ物語なら、その完成度から言って当然『スウィングガールズ』の方に軍配があがる。
少なくともオイラはそうだ。

松雪泰子が冒頭の方でソロで踊ったフラの映像を観て「フラダンスってカッコいいものなんだ」という感動はあった。松雪泰子のシャープな動き。窓から差し込む光。スモークの焚かれた室内で散る逆光......ん?
蒼井優の踊るフラもカッコ良かったよな......んん?
カメラワークやカット割に雲泥の差がでていたが、このダンスシーン『花とアリス』みたいじゃん(笑)
神のような映像と演出と、ダンサーであるところの蒼井優の力。この三つが見事に融合した結果が『花とアリス』のクライマックスのダンスシーンだった。が、『フラガール』では『花とアリス』から更に洗練されたシャープさの蒼井優力量だけが目立った。
このソロのダンスシーンは松雪と蒼井という二人のアクトレスの力量のみで見応えを与えられるシーンになっていたにすぎない。
そのソロのダンスシーンは良いとして、クライマックスのフラダンスは群舞である。
群舞で映像的にも演出的にも感動を与えてこそこの映画のテーマに繋がるはずなのだ。
しかし、それはやはりというべきか、群舞でソロ以上の感動を与えるシーンにはなっていなかった。
群舞で感情曲線を盛り上げる演出法を見せる事でこの映画の独自性というものが生まれた筈なのであるが、この監督は映像表現で物語を語ろうという意思に乏しいのかもしれん。
群舞でソロ以上の映像表現ができないなら、例えば蒼井優がなんらかの理由で舞台に立てないことにしておく。舞台でのフラの群舞と、別の場所で同じ時間にソロで踊る蒼井優を交互にカットを変えながら対置するというのでもよかったかなあと思っているが.....まあ詮無き事ではある。
こういうのを観ると『花とアリス』の映像のひとつひとつに制作者の苦悩やら工夫やらが見えてきて、改めて尊敬と畏怖で頭が下がる思いである。

映画の主題とは関係ないが、日本人がやるウェスタンショーや、ガイジンがやる歌舞伎なんてものはそれぞれ本国のオリジナルからすれば失笑されるのがオチだ、と冷めた目で見ていたのだ。
劇団四季の外から『キャッツ』だの『ライオンキング』だのを持ってきて恥ずかし気もなくやるなんざ、猿真似以下の田舎モンのやることだと。
『フラガール』の福島の常磐ハワイアンセンターも、寒い地方にハワイ?などと思っていた。
しかし、傍から見て見てどうであれ、当事者としてやっている人たちがそれなりの熱意をもってやっていることなら、笑うのは失礼だなと反省した。
彼らがヤシの木を暖める為に土下座までしてストーブを借りようとする熱意は尊重するべきだ。
この映画から唯一得たモノと言えばそんな所か。

『フラガール』の監督は映像的にというよりも登場人物への演出で情感を盛り上げるのには長けているかもしれない。
そう言う意味ではキャストは好演していた。
松雪泰子を躊躇なく男風呂に侵入させ湯船で取っ組み合いをさせたり。松雪泰子っていいなあ。結構見直した。
蒼井優すんごく良かった。『リリィ・シュシュのすべて』や『花とアリス』の顔より良い顔になっていたと思う。オイラ好みの顔だったなあ(笑)。彼女は登場するだけでオーラのようなものを背負ってたように思える。
南海キャンディーズもしずちゃんもナカナカの女優っぷりで良かった。
富司純子もいいね。
豊川悦司......まあ、あんなもんかね(笑)
岸部一徳。このヒトはすごい。ある種外見はいつもの岸部一徳のままなのに作品ごとに違って見える。先日観たニコラス・ケイジみたいなものか。見せ場としては松雪泰子に方言で何言ってるかわからん台詞をまくしたてるところが圧巻であった。

まあ映画としては面白かったとは思う。
米アカデミー賞外国語映画部門へのノミネーションを目指す日本代表作品に『フラガール』が決まったようだが、オイラとしては『Always 三丁目の夕日』だろうと思っていた。
まあ、これも詮無き事ではある。


これからレンタルしてきた『ホテル・ルワンダ』を観る。
これで多分近場のツタヤでのレンタルは最後である。会員の更新は一応したが、今後どうするかはまだ未定(笑)
by 16mm | 2006-09-24 19:06 | 映画・DVDの感想など。 | Comments(4)
Commented by ひらりん at 2006-10-11 03:04 x
トラバ・コメントありがとうございます。
踊りが上手いかヘタかはひらりんにはわかりませんが・・・
情熱を持って踊っていた・・・っていう点で、
松雪泰子と蒼井優のソロのダンスは感動的でした。
Commented by 16mm at 2006-10-11 13:17
■re: ひらりんさん
コメントありがとうございます。

>情熱を持って踊っていた・・・っていう点で
まったくその通りだと思います。二人のソロは鳥肌もんだったと思います。
蒼井優は『花とアリス』で紙コップをトゥーシューズにして見事なバレエを舞ってました。
演技もさることながら、撮影のしかたも良かったと思ってます。
Commented by 猫姫少佐現品限り at 2006-10-25 03:33 x
こんばんは!echo&コメ、ありがとうございました!
あたしはすごく良かったのですが、残念だったのは、その2人のフラダンスが、ぜんぜんダメだったこと。2人とも、お尻が小さすぎるんです。で、動きが悪いから迫力がない。ま、詮無きことなんですケドね。今時の日本女性は、ハワイの肝っ玉かぁさんのようなお尻は持ち合わせていませんから。特に松雪の踊りは、見ていられなかった。蒼井はまだ衣装を付けていたので、腰にボリュームがあったのですが、、、こんなこと思っているの、あたしだけのようですね。でも、蒼井のソロの方が感動的ではありました。だからあたしは、彼女が主役だと思った。
またよろしくお願いしますね。
Commented by 16mm at 2006-10-25 12:53
■re:猫姫さん
こんにちは。
非常に丁寧な解説ありがとうございます。
なるほど。本来のフラダンスが分かってないと見誤っちゃうということですね。
正直に言うと、踊りそのものよりも撮影効果(スモークを焚いて、光を滲ませる)に感動していたのかもしれません。
大好きな映画で「花とアリス」がそのような効果を出して、蒼井優を演出してましたから。
ご意見ありがとうございました。
今後ともちょくちょく寄らせていただきます。


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