『父親たちの星条旗』

五反田勤務になったからというわけではないが、散々悪口を言ったJRのグリーン車に乗ってみた。
いや〜、バカバカしい。
オイラが乗る駅ですでにグリーン車の席は埋まっていて、池袋すぎないと席が空かない。
つまり、通常の乗車券+グリーン券700円チョイを払って池袋まで二階席に向かう階段に立ちっぱなし。
これなら普通の貧乏車両で立ってるのと変わらん。
本当につくづく無駄なもん作りやがって。
あの二階立て車両の椅子を、通常の長椅子にすれば他の車両の乗客の数が分散されて、平均的に快適になると思うのに。
もう二度と乗らん。
オイラは貧乏車両で十分だ。



金曜日。さいたま新都心のコクーンで『父親たちの星条旗』を観る。
イーストウッドの新作にして戦争映画。期待も高く観に行った。
面白かった。
が、これは戦争映画ではないな。

そうは言っても硫黄島の戦闘シーンの迫力はすさまじいもので、艦砲射撃で砲弾が摺鉢山の岩面を砕く音や、米軍の戦車がハンマーで叩かれたような音とともに砲弾が命中する様などは<リアルであるかどうかは別にして>今までに映画として体感した事のないものであったと思う。
プロデュースにスピルバーグが噛んでいるのは資金調達の部分だけでなく『プライベート・ライアン』における戦闘シーンのノウハウ込みのものであろう。
カラーでありながら、"色"を感じさせる限界まで彩度を落としたその映像は『プライベート・ライアン』で確立したスタイルに他ならない。
その他、映画にある種のヒューマニズムを埋め込むのに、殺戮のシーンを残酷に見せれば見せる程いいという考えがある。
腕が飛び、遺体が戦車に轢き潰され、ハラワタを抱えるように死んでいる描写。これらスプラッタと紙一重な描写もこの手の映画の重要な方法論である。
もう当分はこのスタイル以外のアプローチからの戦闘シーンは作れないのではないだろうか。

しかし、このような硫黄島での戦闘が一応この映画のウリにはなっているが、全体を観ればそれが物語の単なる背景にすぎないという事が分かる。
この映画は戦争の英雄というものが、終生に渡り賞賛と尊敬を得るものではないという、ある意味戦争は人を英雄などにはしない、せいぜい猿回しのお猿にしかならないという事の恐怖を描いていると思う。
オイラは第二次大戦で日本は喰うや喰わずの状態で余裕がない状態だったのに、喰うもの喰って戦争していたアメリカに勝てる筈は無いってなことだと思っていたのだが、映画によると当時アメリカも相当に財政が逼迫して余裕がなかったようだ。
だから写真に写った、硫黄島でアメリカ国旗を立てた兵士を意図的に戦争の英雄にデッチあげて、戦争を続ける為の戦争臨時国債を発行に利用したわけだ。
つくづく写真というのは怖いものだ。
撮影者や被写体に如何なる思惑がなくとも、それがプリントされ新聞に載り、雑誌に載った時点で様々な思惑がくっついてくる。
それを利用する事により大衆に対しある種の方向付けを行う事が出来る事もある。
それは広告屋のやるコマーシャルであったり、件の硫黄島の星条旗の写真であったりもする。
それに利用された普通の人たちの悲劇というのは、生還した3人の兵士の末路を見れば明らかだ。
所詮、英雄だのと持ち上げられた所でそんなものは精々戦時下の間のみの事である。
アメリカは日本のような特攻などという事はしないにしても、例えば船から落ちた兵士の為に艦隊を止めるという事をしないという部分で、兵士の命のを安く扱うのは同様だと感じた。

本当に戦争というものは人間を狂ったように活動的にさせる作用がある。
そこでは平時に愚劣な人間かまっとうになることはなく、愚劣な人間は更に愚劣になり、会社で滅私奉公しちゃうような生真面目な人間は真っ先に死んでいく。
そして生き残るのは愚劣なヤツばかり。
どう考えても、戦争というものが人的にも経済的にも割のある行為では無いという事を肝に銘じておきたい。

とことろで、ちょっと気になったのにこの映画で黒人が目立たなかった事だ。イーストウッドがレイシストだなどとは言わない。たぶん兵士の一人にインディアンがいた為、黒人が出てくる事による差別問題の複雑化を作劇上の省略としたのではないかと推測する。

ラストシーン。硫黄島の海岸で遊ぶ米軍兵士の映像から、遠くに沢山の艦船浮かぶ海と空を映して終わるわけだが、そのシーンの美しい事。
殺伐としたギミックが映っているにも関わらず、平和で美しいそのシーンがなんとも人間のやっている下らない行いと関係なしに存在する事を冷静になって眺めてみるべきななかもしれない。

この映画は硫黄島二部作として日米両国の立場からこの地における戦闘、或はこの戦争を描くという試みのようだ。
これで思い出すのは黒澤明の幻と消えた『トラ・トラ・トラ!』だ。
後半はまだ観ていないわけだが、願わくば『父親たちの星条旗』のように、日本人に対しても誇りと一抹の慈悲を感じさせる映画である事を期待したい。
by 16mm | 2006-11-05 22:02 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Trackback(4) | Comments(2)
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Commented by chata at 2006-11-06 23:48 x
観にいくかもなので先は読まないw

五反田検索したら風俗ばっか引っかかりますな!ほどほどにw
あとデトロイトメタルシティは2巻が出たばっかなので(帯はアノ人)、漫喫ではなく購入でぜひ(`・ω・´)
Commented by 16mm at 2006-11-07 10:40
■re:chataさん
五反田での冒険の旅はまだしてません(笑)
「デトロイトメタルシティ」は購入することにしましょう。
帯はいったい誰なんだ。
オイラとしてはハロルド作石でも結構ポイント高い。「ゴリラーマン」面白かったからね(笑)


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