『鉄コン筋クリート』

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一言で言えば、画的な快感のみで作られた作品だと言える。
少なくともオイラはそれ以外の、主に物語としての部分から揺さぶられる事はなかった。



『鉄コン筋クリート』をMOVIX川口で鑑賞。
人から松本大洋の漫画を読むように散々勧められて来た。『ピンポン』や件の『鉄コン筋クリート』なんかを。
オイラ、読んだ事あるんですよね。『花男』はスピリッツ誌連載時に読んでいたし、江口寿史のコミック・キューに載った『ダイナマイツ GON GON』も読んだ。松本大洋をまったく読んだ事がないわけではないのである。
オイラがわざわざエラそうに言うまでもないのだが、非常に画の上手い漫画家であると思う。
しかし、どんなに世間的に美人と言われてるオードリー・ヘップバーンがオイラの好みでないように、蒼井優より鈴木杏の方が好きな様に(笑)、松本大洋の画は明らかに美形ではあっても自分の琴線にはあまり触れない美しさなのである。
映画である『鉄コン筋クリート』。
印象としてはその松本大洋の画を動かしたいという衝動のみで作られたように思える。
それはあの動的で乾いた絵柄を動かす快感に根ざしたものだろう。
その所為か、オイラには映画の方には思いのほかするりと入る事ができた。
なので画的な快感はオープニングのバードビューからして素晴らしく感じられたのだ。
なにより画面から極彩色の色が溢れている筈なのに色彩の印象は非常にシブい。色彩の設計が非常に優秀だ。
カメラワーク、キャラクターのアクション、色彩、構図、美術、町の景観等、映像が台詞以上に何かを語ろうとしている鼓動が伝わってくる、っちゅうか、その目眩にも似た感覚で...またしてもオイラは途中で気を失うわけだが(笑)
原作を読んでいないので一方的に映画について語る愚はさけたいと思うのだが、如何に魅力的な映像を積み上げていても、それだけで1時間51分の上映は長すぎると感じた。
始まって20分。主役である筈のクロもシロにも"粗暴"さ以上の性格付けが見て取れず(クロにはちょっとインテリ風の台詞もあったのだが、それがなんとなくいやらしい計算に見えてしまう)、なんら物語を背負う動機づけがされていないように感じられた。
物語の為の明確な骨格がオイラには意識できなかったし、主役達は物語を加速させる役割をなんら担っていないのだ。
別に粗暴な主人公に無目的な映画というのがあっても良い。ただそう言う映画ならせいぜい30分ぐらいが適当ではないか。
単に粗暴なだけの主人公の映画を1時間51分も観てるのは辛いなと、正直思った。
クロやシロ以外でも、刑事ややくざやチンピラが出て来てちょっと魅力的に見えるのだが、それらが全部"点"でしかなく、物語に有機的に"線"として繋がっていかない。一つの映画の中にまったくバラバラなエピソードが存在しているので、それらがいずれ一つになると思って物語を追っていたオイラはしだいに息があがってくるのだ(笑)
如何に宝町の景観を魅力的な描いているからといってそれだけで1時間51分は長すぎる。環境ビデオだってリピートして流すのに短く作っているではないか。
それでも映像的なアイデアは素晴らしいものがあった。
クロの背後にカラスやハトが止まったり、リンゴの種から芽がでて葉がでて花が咲く描写なぞゾクゾクした。
それらが意味しようとする事がなんとなく分かるだけに、それを物語に上手く絡めてもらいたかった。もっと分かる形で。
そのように全てがアイデアの断片でしかなかったのが非常に残念だった点である。
良く言えば非常にトンがったアマチュアの映画とも言える。
あるいや客層を絞るアート系の作品とも言えるかもしれない。
そう考えると『時をかける少女』なぞ一流のプロの仕事であったな。商業的な妥協点と監督の持ってるアートな感覚を上手くミックスで来ていた。

キャストの声がみんな素晴らしい。主役の二宮、蒼井は言うに及ばず、ヤクザ・木村の伊勢谷友介、ネズミの田中泯、刑事・沢田の宮藤官久郎などそれぞれにリアリティを与えていた。

素材全てが一級品なのに一つの料理としてバランスが取れなかった...これがこの映画に対するオイラの感想である。
by 16mm | 2006-12-24 23:09 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Trackback(1) | Comments(2)
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Commented by チャーター@携帯 at 2006-12-30 19:48 x
さっき観終わってやっとコレも読むことができたにょ

大洋が合わない体質は前に聞いてたので、よくぞ観てくれましたなと感謝……って寝たんかい!w

なるほど的確な御意見で、その通りなんすよ。原作もあの映画を超える内容ではないんです。薄いんですwむしろ原作の釈然としないとこまで、きちっと再現してくれてました。うぷプ。

原作ファンのミーからみて良かったとこは、どとはんがほめてるとこと大体一緒かな。ただやはり驚きの度合いは違うでしょうな。当たり前だがw

なので、大洋作品もすべて鉄コン筋プリートしてるボクちんは、時かけと並んで同率1位とします!(横暴
Commented by 16mm at 2006-12-30 22:37
すいません。途中で気を失いました(笑)
いやしかし、ヴィジュアルはすごかった。
ちょっとあの色彩設計は尊敬に値するなと思いました。
あんだけ色がついてると、普通は『男はつらいよ』のようなドロ絵の具のような美術になってしまうところだけど、上手く彩度を落として色彩の多様さとは裏腹に画面の印象がシックに見えて良かったデス。

大洋は合わないと言いつつも、映画の紹介記事の写真なんかを見て、やはり心動かされましたやね。
電柱の上に立つクロ。カッコよかったしね。


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