『監督・ばんざい!』『大日本人』

土曜日にMOVIXさいたまで『監督・ばんざい!』『大日本人』を観た。
久々の二本立てでの鑑賞であったが『大日本人』は上映一時間後に退場していた。
劇場も『監督・ばんざい!』より『大日本人』の方が大きいのがたけしフリークとしては腹立たしい所ではあるのだが(笑)
どちらも日本の芸人さんとしてはトップクラスの人物であり、オイラも松本人志の番組を観て笑っているぐらいなのでキラいではないのだがね......

『監督・ばんざい!』
前作の『TAKESHIS'』の時の感想と基本的には同じである。
所謂普通の映画を作るのに飽きたかつまらなく感じているたけしの気持ちが伝わってくる。
それ故に所謂普通の映画を壊してみせる映画を二本続けて作ったのだと思う。
たけしの苛立というのは、その普通の映画を壊す事ができても、自分自身が新しい映画を提示する事ができない、考えつかないという部分であろう。
必死にピカソやなにかの絵画の表現を引き合いにだしてはいるが、それすらもたけし本人の混乱を示しているにすぎない。
本作で俎上にあげられた小津風、SF風、ホラー風、ラブロマンス風等の断片を作ってはいるものの、本人の思いとは裏腹にたけしがどう頑張っても最後まで作れない映画であろうと思う。
バイオレンスを封印して別のジャンルをというのは監督としての能力を試したい気持ちの表れなのだろうと思うが、私にしれみればバイオレンスを封印する事自体が間違いなのである。
その証拠に冒頭のバイオレンス映画の部分が一番生き生きとしていたように見えたから。
これまでたけしは、バイオレンス風ラブストーリーも、バイオレンス風コメディーも、バイオレンス風時代劇も、バイオレンス風小津映画も(これは『HANABI』がそうかなとオイラはおもっている)作ってきた。
それでいいじゃないかと思う。
他の映画を散々批判するのもたけしらしくないとも思うのであるが、国内で自分の映画が評価されない事への苛立なのだと理解する。
『座頭市』を自分が本気になれば興行的にヒットする映画も作れるんだと自慢気に話していても、多分オイラを含めた生粋のたけし映画のファンはうれしくもないのである。
本作『監督・ばんざい!』については、あまり難しく考えずに観れば面白いコメディー映画になっていたと思う。
物語の筋で見せるというよりも登場人物の面白さで見せる映画であった。
鈴木杏と岸本加世子の詐欺師親子も良かった。鈴木杏は岸本に負けない演技で拮抗していた。たいした女優である。
それからなんと言っても江守徹。
岸本にしても鈴木杏にしても江守徹にしても、コメディーから遠いと思われている俳優が笑いの演技をするのを観れるというのが、この映画での唯一と言っていいポイントであると思う。
つまりそれしかない映画だと思う。
映画を破壊する映画をもう一本撮るというが、そんな無駄はやらずにちゃんとした美しいバイオレンス映画を作って貰いたいと切に願う。
オイラの自慢は興行二週間で打ち切りになったという『ソナチネ』を劇場で観て、それを最高に良い映画だと感じられた事だと思っている。


『大日本人』
多分であるが、冒頭大佐藤が出てきて獣と戦った後から気を失って(笑)起きたら工員風のユニフォームを着たオッサン二人のインタビューになっていた。その時点での退場である。
上映開始から40分ぐらいで出たのだが、観たのは冒頭の10分ぐらいであろう。
たけしにも松本にもいえるのだが、今既存のものを壊すという発想の方が安易だという事を分かっているのだろうか。
たぶん分かっているのだろう。
マンネリであるとか普通であるとか言われつつもその中で僅かでも新しい事を見つけようとしている職業監督がいる中で、たけしや松本はそれが出来ないから最初から「既存の映画を壊してます」という言葉を言い訳にして映画の出来に対する批判をそらしているにすぎないのだ。
それでもたけしはこれまでの映画で、所謂普通の映画の撮り方を踏襲した作りの作品を作ってきている。その上で映画を壊すという行動にでたのも分からなくはない。
しかし、松本の場合、映画で壊すべき自分の実績すらないのに最初から壊そうとしたって壊せないだろう。
この映画ドキュメンタリー形式の体裁をとって進行しているのは冒頭から分かっていた。
このドキュメンタリー風というのを言い訳にしているのだ。
つまりライティングも構図も行き当たりばったりで良い。更にカット割を考えなくてもいい。
映画監督が腐心する部分で楽をしているとしか言いようが無い。
というか、松本はカットが割れないから、画が作れないからこんな形式にしたんだと思う。
冒頭の大佐藤と獣のほぼフルCGでの戦いはなかなかすごいとは思ったが、これはCGがすごいのであって、演出の力ではあるまい。なので作品上無駄なすごさなのだ。
とにかく伏線や"まえふり"と思える台詞を喋っているのは分かるのだが、あきらかに観ていてかったるい。
深読みすれば、有名タレントである松本人志とそれを取り巻く環境を戯画化してドキュメンタリー風に仕上げたとも言えるのだが、オイラはそんな映画を面白いとは思わない。
よく引き合いに出されるのはフェデリコ・フェリーニの自己言及的な映画の存在であるが、あれはフェリーニだから許されるジャンルだという事を謙虚に受け止めるべきであろう。

松本はもう映画を作らんだろうな。
by 16mm | 2007-06-03 21:40 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Trackback(3) | Comments(2)
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席を立つのは自由だけど、最後まで観ずに批評する姿勢ってどうなんですかね?まぁ、それも自由だけど。
何にせよ松本は映画を今後も作るし、このコラムは面白くなかった。
Commented by 16mm at 2007-06-09 09:40
■re: maruさん
maruさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
確かに最後まで観ないで観たような批評なり感想の駄文を掲載するというのは、自分としてもどうしたものかとも思いますが、まあ、まったく影響力のない素人の感想文としてご容赦ください。
松本人志という芸人はきらいではないのですが、自分としては今回のように彼の映画を途中退席したぐらいなので、今後映画を作っても観に行かないと思ってます。それぐらいの覚悟の上での途中退席であり本コラムの駄文であります。
なので、私としては松本は今後映画は作らないだろうし、作らない方がいいなと、自分では思っております。


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