『プラネテス』『下妻物語』

ひさしぶりに撮影をして、ハッセルを使った。
よくカメラ雑誌で書かれている『立体感』を、初めてファインダーで確認出来た。『立体感』だとか『空気感』だとかを今まで感じた事がなかったので、気の狂った能書きw程度に思っていたのだが......
ハッセルの大きなファインダー越しに、確かに立体的な世界を確認出来たのが非常に嬉しかった。

『プラネテス』レンタルDVDで観た。
漫画は全巻読んでいたので、わざわざアニメーションを観なくても、とか、サンライズが作ると大味になってんじゃないか、とか思いつつあまり観るつもりはなかったのだ。
面白かった。
宇宙服のデザインや台詞のディテールの情報量が原作以上に緻密になっていた。単行本全4巻をTV版に伸張するための脚色が非常に上手くいっていると思う。
本来はシリーズを通して観ての感想にするべきなのだが、少なくとも続巻を観る気にさせる1話2話であった。
作画も非常に丁寧である。この水準をシリーズ全体で維持出来ればたいしたモノである。
原作はハチマキを主人公としつつも周りの様々な登場人物の群像劇のような体裁になっているが、TV版ではタナベが原作より幼い感じで描かれているので、ハチマキとタナベを軸にしていくのかなと思ったりしている。
人間はどこから来て、どこまで行けば気が済むのか......そう問いかけずにはいられないような良質な原作と相互に補完しあうような作品であって欲しいと願いつつ、続巻を観ていこうw

『下妻物語』レンタルDVDで観た。
ボイスオーバー(ナレーション)による語り口が『アメリ』に似ているなと思ったが、別にそれがこの映画にマイナスをつけるわけではない。
面白いw
主に心象風景の描写によって成り立つ少女漫画を、少年漫画の切り口で切り返してる、そんな印象の映画であった。
今、愛だの友情だのをストレートに表現したら相当に胡散臭いという事を作り手は熟知しているようだ。愛や友情を描きつつも更にそれを冷ややかに見て笑っている。
それでも観終わると、ロリータ娘とヤンキー娘の友情物語として素直に受け取れるのである。
深田恭子のラスト近くのアクションが非常に良い。それは日本刀を振り回す女優より殺気があったと思うw
主役の女優二人はもとより、脇を固める役者も大健闘。
最近TVでは体験できないようなエンターテイメントを映画館で体験できるようになってきたようだ。やっとお金を払う価値のある日本映画が増えてきたんだと思う。
そうは言っても、この映画劇場で観てなかったのだが(笑)
監督は以前『サッポロ黒ラベル』のCMで、スローモーションによる卓球シーンを演出したり、ガッチャマンに扮したスマップのCMを作った人らしく、映像は凝っている上に内容にマッチしている。
ラリった時に観るような色彩(笑)その他映像の随所に魅力的な工夫があり、それだけでも相当な吸引力があると思う。
地方を舞台にしてタイトルが『下妻物語』。イメージ的には垢抜けない。
しかし実際には垢抜けなさとは無縁であり、映像でも内容においても、キャラクターの造形してもセンスの良さに驚かされた。
非常に良くできたコメディーの傑作だと思う。

イチゴが泣くシーンで泣き声を出さなかったのが非常に良い、という感想は男特有の感想なのだろうか(笑)
# by 16mm | 2005-04-24 23:36 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Trackback | Comments(8)

『コラテラル』

『コラテラル』をレンタルDVDで観た。
面白かった。
劇場で観とけばよかった。
この日記で散々にコキ下ろしたジェイミー・フォックスだが、件の『Ray』よりも『コラテラル』の演技の方がずっと良い。
主演で取るより助演の『コラテラル』でオスカー取るべきだったと思う(筆者は主演より助演を下に見ているわけではない。念の為)。
ああ、そっか。助演受賞はモーガン・フリーマンだった。そうすっとやっぱモーガンだな(笑)
それでもジェイミー・フォックスのオスカー受賞は『コラテラル』でと思っておこう(笑)

ちょっとネタバレ
# by 16mm | 2005-04-17 23:41 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Trackback | Comments(14)

閑話

宮沢和史の『島唄』が好きなのだが、たけしの番組であの詩が沖縄戦でのひめゆり学徒隊の女性達の事をモチーフにしていると知り、襟を正した。

韓国で日本の『火垂るの墓』の上映が延期、というか中止されたと。なんでも日本が先の戦争で被害者として描かれてるのが気に入らないと。
あの超重量級の戦争映画(反戦映画ではない、と思う)に、状況の普遍性を見出せないとは。
たぶん、多くの一般の韓国人なら、観ればその普遍性を理解できると思うのだが。

中国や韓国での反日デモが苛烈化しているが、反撃しないもんだから日本はサンドバック扱いだ(笑)
しかし、なんとプラカードの文句が下品な事。昔の日本の反米デモもこんなアカ抜けない感じであったのだろうと思うと気恥ずかしいですな。

中国も韓国も面白い尊敬すべき映画があったりするし、それら制作者が日本映画の影響を受けてくれたり、日本の俳優を使ってくれたりしているので、必ずしもデモをして傷害事件を起こすような意思が総意だとは思っていない。

それに本気で反政府デモをしたら天安門のようにすぐに軍隊に鎮圧される筈だ。

オイラとしては、反日デモをやるのは歴史認識で言えばしかたないかなと思っている。
それなら、反英デモや反米デモもやってくれないと不公平だ。
アヘンを清国に輸出していたエゲレスに卵はぶつけないのか?
イラク戦争で中国領事館に「誤爆」したアメリカの国旗は焼かんでエエのか?

反英反米なんてやったらどんな事になるか分かってる。
日本は領事館が襲われても手は出さんが、アメリカならミサイル打ち込むと思うぞ。
あの国ならやりかねん。
それに比べてサンドバック、もとい日本は外相が遺憾の意を表明するぐらいだから痛くも痒くもないわけだ。

とりあえずだ、この手の事は放置しておく事がベストであろう。観光や出張等の渡航自粛をする。
ゴールデンウィークが近いが、今中国に進んで殴られに行く日本人はそうはおるまい。

中華が食いたいなら、世界で一番旨いのは日本の中華料理だと思うぞ(笑)。

あ、今塩ジイがTVで「基地外」発言(笑) 福沢アナ、大慌て(笑)
差別語になってる「気違い」だが、どうもこの言葉が差別語だとは思えない。
「精神病」や「障害」という言葉の方が、他人と違った部分をハナからビョーキと決めつけてるから差別的だと思う。
「気違い」というのは他人とちょっと「気」が違うだけで病気という意味合いは含んでいないと認識する。
# by 16mm | 2005-04-17 23:39 | 閑話 | Trackback | Comments(2)

『血と骨』

映画が総合芸術と言うのであれば、その作品の評価というのは演出、脚本、音楽、撮影、その他諸々が、他の映画より優れていなければならないと思う。
作品はAが優れているが、監督の演出はBという作品が優れていて、音楽はCが......などというのは総合芸術の評価の仕方として"ねじれ"があるとしか思えない。

日本アカデミー賞最優秀監督賞 の『血と骨』をDVDで観た。
作品賞は『半落ち』。脚本賞は『スウィングガールズ』の矢口監督。
最優秀な作品は監督も脚本も最優秀でなくて良いのか?

『血と骨』について率直な感想を言えば、つまらなくはない。

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# by 16mm | 2005-04-10 23:15 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Trackback | Comments(3)

『12モンキーズ』

公開当時からテーマ曲である組曲プンタ・デル・エステが耳について離れなかった。
高層ビルの上を飛んでいくフラミンゴ。建物の上で吠えるライオン。そんなイメージを映像に定着させている。それを観ただけでギリアムの映画だという事がわかる。

『12モンキーズ』のDVDを買った。
テリー・ギリアム監督は大好きだ。
この映画のDVDは以前から出ていたが、LDを持ってる事もありなんとなく購入せずにいたのだ。
が、このほどLDで別売りされていたメイキング込みでDVD化されたので即刻購入したのである。
しかも監督とプロデューサーのオーディオコメンタリー付き。
DVDも買うタイミング次第だなあと思う。待てば今回のように特典がおいしい状態で購入できる。が、待つだけ待って絶版になる事もあるから油断できない。

劇場、LDやビデオでは字幕で観た『12モンキーズ』だが、いつものようにDVDは日本語吹き替えで観た。
すると画面に集中したおかげで字幕を読んでいて気が付かなかった映像のディテールが見えてきた。
精神病院を脱走しようとしていたコールがレントゲン室の機械の動きを見るシーンがあるが、それは観客にタイムトラベルする時の機械と酷似していると言う事に気が付かせるシーンだという事に今回初めて気が付いた。コールの眼を通して分からせる部分であったのだが、今までオイラはまるで気が付かなかったのである。
こんな些細な事であっても、オイラはずいぶん見逃してる部分や理解が足りなかった部分があったなとDVDを観て反省をした。
更に時々聞こえる声が誰の声なのかというのを悩んだりしたのだが、コールにだけ聞こえる妄想の声と考えれば納得がいく。
ウィルスで死滅しつつある未来世界の人類も、タイムトラベルもすべてコールの妄想かもしれないという解釈もあり得る、そういう構造に作ってあると監督も言っていた。
そもそも二つの世界(妄想と言われる世界と現実と言われる世界)で気違い扱いされれば、普通正気は保てないやなw
たぶんコールはライリー博士と一緒にいる時だけ正気でいられ、博士を抱き締めることで現実のにおいを確かめていたのだと思われる。
映画は一見タイムトラベルをテーマにしたもののように見えるが、どちらかというと破滅を夢想して内向していく気違いの映画だといえるかもしれない。

主演の3人は見応えのある演技をしていた。

それよりもコメンタリーを聞いていて、ウィルスをバラまく科学者の役をデヴィッド・モースが演じているのを初めて知った。
『交渉人』の市警の役をが印象的だったのだが、『12モンキーズ』ではやや顔がふっくらしていたので、まったく気が付かなかったのである。
監督もプロデューサーもラスト近くの空港での演技を絶賛していたが、たしかに微妙な顔の表情が非常に良かった。この人は演技の幅の広い人なんだなと改めて思った次第。

終末を感じさせる映画にルイ・アームストロングの『この素晴らしき世界』を使うというセンスはハリウッドの映画からはなかなか出てこないだろう。
キューブリックの『博士の異常な愛情』のラストで核爆発してる映像のバックに流れる『また会いましょう』と同じくらい皮肉が効いている。
テリー・ギリアムもスタンリー・キューブリックもイギリス在住のアメリカ人だ。
たぶん二人ともイギリスの露骨な身分差別的な影響を強く受けていたにちがいない。
アメリカ人などイギリス人からすれば、歴史が薄い、粗暴な国の人間程度にしか認識してないだろうから。

ところで、字幕を読んでいるうちに流れていく映像を見逃してしまうことで映画の印象が大きく変わる、という事に今更ながら気が付いたわけだが、オイラのような日記程度の感想文を書いているならまだしも、日本人で映画評論家でございと名乗ってる者は、最低限英語が話せて英語圏の文化に精通していて、当然字幕無しで映画を理解できなければカネを貰う仕事としての資格はないのと違うか?
# by 16mm | 2005-04-09 00:43 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Trackback(2) | Comments(5)

『スウィングガールズ』『アビエイター』

あまかった。
『スウィングガールズ』のDVDは当然一番高いプレミアム・エディションを買うつもりでいたのだが、完全予約制との事で手に入れる事ができなかった。発売日にどうせ在庫があるだろうと思ってタカをくくってい油断したのだ。
諦めてスペシャル・エディションを購入したが、店頭平積みしていたDVDの厚みが薄くなっていたので可成りの売れ行きなのだろう。喜ばしい事だ。
映画の内容はもう言うまでもない。劇場で都合2回も観たのだ。
上野樹里が片足でリズムを刻む様がカッコいいったらありゃしない。
ラストのコンサートのシーンはやっぱ感動もんだった。
特典のメイキングとコメンタリー2種を全部を観た。
監督のコメンタリーが愉快である。この監督、オレと同い年。しかも誕生日が三日違いでやんの(笑)
メイキングで劇中最大のスペクタクル、『この素晴らしき世界』をバックに流しての猪との攻防の説明がなされていたのが興味深かった。
事前にテスト撮影までされていたこのシーン。撮影上の約束事として、●ピントを送らない。●カメラはパンをしない。●人物と人物の間をカメラが抜ける動きをしない。●必ずカメラは人物の外側にいて横移動する。
こういうメイキング話はちゃんとは理解できなくても蘊蓄として大好きだ。
それから、主要キャストは5人なのだが、その他12人の女の子達の性格造形、というか監督の気の使い方に好感がもてた。基本的に優しい人なのだろう。DVDのキャスト紹介にも全員のプロフィールが載っていた。特に特典映像でガールズが全員参加している短編映画を作っている。
ところで日本アカデミー賞、脚本賞は矢口監督が取っていたが、作品賞と監督賞は『スウィングガールズ』よりも優れている映画が取ったんだろうな。
当然それはいっこも引っかからなかった『花とアリス』よりも優れていることを期待しているぞ。

『アビエイター』初日初回に劇場に観に行った。
3時間まったく飽きさせない運びは、スコセッシたいしたものである。
面白かった。
この映画は伝記の要素を含んでいるので観る側がその人物を知ってるかどうかが内容の是非に影響するのかもしれん。ちなみにオレは主人公のハワード・ヒューズについてはほとんど知らない。
ところで、スコセッシという監督は空を飛ぶという事についてあまり興味がないようだというのを感じた。止まってる飛行機のラインを美しく見せる映像は撮れても、飛翔するという映像に官能性がまったくない。
スピルバーグや宮崎駿の映画にあるそれがないのである。
これの是非を言っているのではなく、作家としての資質の違いと言える。
ではスコセッシの映像の官能性はどこかといえば、明らかに破壊や破滅の描写に他ならない。
飛行機が墜落して畑の植物を薙ぎ払う。ビバリーヒルズに墜落して家も飛行機も、そしてハワード・ヒューズもズタボロになっていく描写。
精神のバランスを崩し引きこもって瓶の中に小水をし、その琥珀色の瓶が横一列に並んだカットの美しい事。
破滅を創造する、というか破滅に向かう道程を非常に美しく官能的に描写している。この辺りは『タクシードライバー』からモチーフとして変わってないのかもしれん。
欲を言えば、晩年に近かったであろうヒューズの全裸姿が若々しすぎたのが難点だ。この辺りはまだディカプリオでは役不足だったのだろうか。『レイジングブル』のデ=ニーロなら体型を崩すような役作りまでしただろう。
アカデミー賞。監督も主演も逃したが、ディカプリオに主演賞やってもよかったんじゃないかなと思った。演技はかなりがんばっているように見えた。少なくともジェイミー・フォックスよりも良かったんじゃないかと思う。
......
じゃあそうするとジョニー・ディップと比較したらどうなんだと言われれば、ジョニー・ディップだよなと思う(笑)
監督賞をスコセッシが取れなかったのは残念だが、まあ『タクシードライバー』でも取れなかったわけだし、本人は欲しいかもしれないがオレは無冠の方がカッコいいかもしれんと思い始めてる(笑)
# by 16mm | 2005-03-27 22:52 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Trackback(2) | Comments(18)

『ロング・エンゲージメント』

中島みゆきの実験劇場『夜会』で『vol.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』というのがあり、私が(LDでだが)観た中ではそれが一番好きだったりする。
それは"待ち人"を待つ者に対し、きびしい眼差しを向けた公演であった。
つまり、待ち人を"待たない"というテーマを語り、"待つ"事が美徳という思い込みに痛烈な一撃を与えていたのだ。

土曜日に年明けから楽しみにしていた『ロング・エンゲージメント』を初日の初回で観て来た。入場者が6人しかおらんかった(笑)
期待に違わぬ傑作。大変良かった。2時間ダレ場なし。

ここから先、ネタバレあります。
# by 16mm | 2005-03-14 00:38 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Trackback(4) | Comments(8)

人権擁護法案

時間がないが、取りあえずメモっとく。
人権擁護法案について(デスノート風)。
# by 16mm | 2005-03-12 07:21 | 閑話 | Trackback(1) | Comments(3)

『失踪日記』

会社がイヤだ!!!!、というわけではなく、実生活に煮詰まっているというわけでもないのだが、ひたすら桜 玉吉の漫画を買い続け読み続けてる。
ケミカルでハイになれるなら強引にでもハイになっていたいもんだと思うが、どう考えても一時しのぎにしかならんので実際にやる気はおきないよな〜(笑)

もうアチコチのサイトで話題になっているようなので今更という感じではあるが、吾妻ひでおの久々の新作『失踪日記』を買った。
自身が漫画をほっぽって失踪しホームレス(作中では"こじき"と表記していた)生活をしていた事を漫画に描いているのだが、驚く程自分をクールに見つめている。
私小説風、というと自己憐憫を思わせぶりに哲学風を装ったりしてエラそうだが、吾妻ひでおは家族をおいて二度も失踪するというシャレにならない事態をギャグにしているのだ。
これは誰にでもできるこっちゃない。
おまけに最近では珍しくコマ割が4段組だ。そのコマひとつひとつに丁寧に背景を描いているわけである。
私は後半のアル中になり家族の手で精神病院に入院させられた話がすごく好きである。
アルコール中毒になって、なんでもない子供や女子高生が幻覚で恐怖の対象に見える所の描写などゾっとするほどリアル。
フィリップ・K・ディックの世界みたい。
だれにでもオススメはしませんが、吾妻ひでおの漫画を一度でも読んでオモシロイと思った人は、買って絶対損はない。
# by 16mm | 2005-03-08 23:09 | | Trackback | Comments(0)

『ローレライ』

日本文化の「見立て」というものをからめて、SFXについて語ったのは岡田斗司夫である<オタク学入門>。
日本庭園の大きな石を島に「見立て」、玉砂利を波に「見立て」たりするアレである。

『ローレライ』の初日初回を劇場で観て来た。
ちょっとイラついた部分もあったが、非常に良かったオモシロかった。
架空の潜水艦と架空の索敵システム。これらを劇中説得力をもって見せるのがSFXにおけるセンスやコツや技術なのであろう。それらについてはかなり高度な説得力を獲得していた。その辺りはさすが樋口監督である。
CGそれ自体を比べるならば、アメリカ映画のに比べれば日本映画のそれはちゃちに見えてしまう。その辺りは残念ながら『ローレライ』も然りである。
しかしCGで作った「絵」を潜水艦に「見立て」る、リアリティーを与える事に対する努力は最大限なされている。
まずその一つにSEがあげられる。潜水艦内で結露した水滴がポッポッポッっと落ちる音。信管抜きの魚雷を受け舵がきかなくなった駆逐艦どうしがぶつかる時の金属の高いキシミ音などが非常にリアルだった。
SEはスカイウォーカーサウンドで付けたらしいが、音源のライブラリーの厚さの勝利であろう。
ローレライが起動した時の描写も印象的だ。磁石に引き寄せられる砂鉄が形を作るようなアナログっぽいディスプレイのアイデアは新鮮だった。グリッドがガガっと立ち上がっていく所がカッコイイ(笑)。さすがに今のパソコン画面のような表示をしては台無しであったろう。
予告編やスチルで観た時のセットや緑の軍服のテカりは抑えられ、画面全体がツヤを消したようなものになっていたのもよかった。
そして役者陣の大健闘も映画のリアリティーを支えている。主役連の演技は言うに及ばず、艦内描写で「ベント弁開け」の手際の見事さ。その熟練した感じが「らしく」見えるのである。
役所広司や妻夫木聡や柳葉敏郎は当然として、個人的にはピエール瀧の無骨さが非常に印象に残っている。妻夫木聡は良い役者だなと思う。

劇中、浅倉大佐がやろうとしていた日本のリセットをローレライの絹見艦長等が阻止するわけであるが、戦後日本の今の状況を見ればリセットすべきだった、と思う部分は私にもある。衝動的にこんなニッポンに鉄槌を与えてしかるべきだと思ったりもする。
「ニッポン人は自分で絶望から立ち上がる」という絹見艦長のこの言葉が当時の絶望寸前のニッポン人の希望だったのだと解釈すると、今の日本の状態を恥ずかしく思うからだ。
立派な人間は死に、下らなく愚かな人間が多数生き残るのが戦争なのである。

パメラ役の女の子の台詞が少なくて良かったと思う。長くしゃべらせたら絶対ボロが出てたろう。
映画の予告編で『あずみ2』がかかっていたが、「主役のネぇちゃんにしゃべらすな、台詞言わんとけや」と思ったりした。

で、私がちょっとイラついたのは、冒頭に出てくる能書きと劇中唐突に挿入される心情描写のボイスオーバーである。
スカイウォーカーサウンドで付けたSEと、あれだけ説得力のある役者が演技をすればボイスオーバーの解説などなくても観客に伝わるものなのだ。
現にラストでローレライがどうなったか。折笠とパメラがどうなったか。そして唐突に最後に出て来た作家らしき人物についての説明も一切言葉ではされていないのだ。
その作家のしていたあるアイテムを見さえすれば、だいたいの予想は観客にもつけられる。
それが良いのである。
言葉で説明しなくても、映像がすべてを物語っているわけだから。言葉による説明は野暮ってものだろう。

それと音楽も良いのであるがちょっと仕事のし過ぎだと思う。これも効果音と役者の演技で保たせられた筈だ。

それはそれとしてオイラとほぼ同世代の人間がこんな映画を作った事が、羨ましくもあり、誇りに思ってもいいと思うな。
取りあえず見応えのある映画であることには間違いはない。
早くもDVDが待ち遠しい。
できれば劇場でもヒットしてもらいたいものだ。
# by 16mm | 2005-03-06 23:56 | 映画・Blu-ray・DVDの感想など。 | Trackback(1) | Comments(10)